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テーマ : 教育・子育て

なくなる学校。地域にできることは?① 静岡市の事例から【賛否万論】

 少子化が進み、県内でも中山間地を中心に小中学校の統廃合が加速しています。小規模な学校は個別対応がしやすいなどメリットもありますが、一定規模を下回ると集団教育が難しいなどデメリットが大きくなるとされ、統廃合は避けられない状況になりつつあります。一方で学校がなくなると地域が衰退する懸念は住民に根強くあります。今週から、少子化の中で学校と地域はどうあるべきかをテーマとして取り上げます。初回は学校統廃合が進む静岡市の藁科川上流域の事例を基に地域住民の葛藤と本音を紹介します。(社会部・大橋弘典)
 <メモ>静岡市教委によると、2024年4月に旧清沢小、旧水見色小を中藁科小に統合したのは第1段階。第2段階は28年4月に中藁科小が藁科中に移転し、施設一体型の小中一貫校とする。藁科中の敷地内に新校舎を建設する計画。小学校と中学校の教育課程を柔軟に編成できる義務教育学校化や新校舎の木造化も検討する。
 藁科川上流域、地域に根付く学校が統合 コミュニティー維持へ住民葛藤
 旧清沢、旧水見色小 苦渋の決断
 山間部が広がる静岡市葵区の安倍川支流の藁科川上流域。集落が谷ごとに点在し、昭和の自治体合併前は村としてコミュニティーを形成していましたが、今では道路が整備され、市街地に車で通勤する住民も多くいます。ただ、そんな状況でも明治時代から歴史を刻んできた学校は地域に根付いてきました。
 統合望んだ保護者
 この4月に中藁科小に統合された旧清沢小は1872(明治5)年創立。清沢神楽など地元の伝統文化を児童が小学校で学習し住民が指導するなど、学校と地域が連携して子どもと伝統を育んできました。「清沢小ありがとうの会」で地域住民と合唱する児童=2月、静岡市葵区の旧清沢小
 しかし、学校統廃合を望む声を上げたのは旧清沢小の保護者でした。「1人でも多くの児童の中で子どもたちに学習させたい」―。未就学児を含めた将来の児童数を調べると、急速に減少が進むことが判明。閉校が先行した旧峰山小の経験や住民アンケート結果も踏まえて、PTAが主導する形で統合へ動きました。保護者以外の住民を含む自治会も「保護者の意向を尊重したい」と市教委に働きかけることにしました。
 清沢地区の前田万正自治会連合会長(67)は「学校と地域の関係は深い。学校がなくなって地域が衰退するという声も分からないわけではない」と話しますが、閉校時の児童数は18人で全学年の複式学級化が避けられない状況でした。苦渋の決断だったことをうかがわせます。清沢神楽など文化の継承については「地域のつながりは残っている」と保存会などを通じ住民が主体的に関わる方針です。
 子どものためなら
 旧清沢小と同じく今春に中藁科小と統合した旧水見色小はさらに地域と密着していました。小学校区に町内会が一つという珍しい学校で、保護者がアイススケート場を校内に手作りしたり、学校で住民も参加した地区運動会を開いたりして学校と地域の活動が一体化していて、3月の閉校式典も住民が主催しました。地域住民が企画した閉校式典でメッセージを読み上げる児童=3月、静岡市葵区の旧水見色小
 実行委員長を務めた佐藤雅一さん(63)は親しみを込めて水見色地区を「村」と呼び「村の生活と子どもの環境が一つ。地域コミュニティーの中心に小学校があった」と振り返ります。ただ、閉校時の児童は4人。少人数の教育環境を敬遠して別の地域に転居する人もいて、少子化が少子化を招いていました。旧清沢小と中藁科小の統合の動きも踏まえ、旧水見色小の閉校も受け入れました。
 佐藤さんは「時代が変われば教育環境も変わる。子どものためなら閉校が正解かな」と声を落とします。旧水見色小PTA会長だった勝山佳紀さん(51)は「学校がなくなって寂しくない住民はいない」としながらも「子どもたちは統合に向けて楽しみが増えている。子どものことを考えれば閉校は間違っていない」と自らに言い聞かせるように語りました。
 統合に距離置く大川地区
 移住者 増えたものの
 同じ藁科川上流域でも、中藁科小から直線距離で約10キロ上流に位置する大川地区。他の中山間地と同じように人口減少が進んでいましたが、10年ほど前から、学校の存続を狙って移住支援に力を入れてきました。小規模校ならではの教育環境を売りにし、元々の住民よりも移住者の子どもの数が上回る“逆転現象”が起きるほど移住者は増えました。ただ、それでも大川小中の児童生徒数は減少傾向にあります。移住を支援する大川地区の住民が集まった会合。学校統廃合も話題になった=3月、静岡市葵区日向
 他地区との学校統廃合に距離を置いていますが、中藁科小などの統合準備委員会には大川地区の関係者もオブザーバー参加しています。大川移住定住協議会で移住者を支援する永野守さん(77)は「私から学校を残した方が良い、残さない方が良いと言えない。あくまでも保護者の考えを尊重したい」と静観する方針です。
 旧楢尾小の苦い経験
 また、学校統廃合後の空き校舎の活用は課題で、旧清沢小、旧水見色小の活用方法は決まっていません。市は中山間地の雇用創出に力を入れる方針で空き校舎を生かしたい考えですが、具体策はまだ見えていません。
 大川地区には苦い経験があります。上流部の旧楢尾小が1995年3月に大川小に統合され、空き校舎はしばらく社会教育や創作活動の場として貸し出されましたが、施設の老朽化などの理由で20年度に解体され、今は人がほとんど訪れません。大川地区の移住支援に携わり、楢尾に住む森久子さん(68)は旧楢尾小の経緯に触れ「学校は地域の核。なくなれば郵便局や農協なども撤退し、地域が衰退するのではないか」と学校存続を主張します。現在は活用されていない旧楢尾小跡地。訪れる人もほとんどいない=3月、静岡市葵区楢尾
 次回は同じテーマで、中藁科小に統合された旧清沢小児童の保護者インタビューを掲載します。

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