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テーマ : 教育・子育て

失敗乗り越える力育んで 鈴木のりたけさん作「大ピンチずかん」 親子で楽しめて大人気

 しゃっくりが止まらない、先生にお母さんと言ってしまった-。誰もが経験するようなハプニングをユーモアたっぷりに紹介し、シリーズ累計100万部を突破した大人気の絵本「大ピンチずかん」(小学館)。作者の鈴木のりたけさん(浜松市出身)は「失敗しても、自分で乗り越える力を育んでほしい」と思いを込める。
「たくさんピンチはあるけど、どうにでもなる」と話す鈴木のりたけさん
 絵本は子どもが体験しがちな「大ピンチ」を、レベルの大きさやなりやすさ(発生しやすさ)で分類し図鑑風に収録。対処法や類例も紹介する。
 例えば、ジュースの紙パックの差し口にストローが全て入り込んだ「ストローがとれない」は「大ピンチレベル5」、「おべんとうをわすれた」は「レベル72」。
絵本「大ピンチずかん」より
 「ストロー」のページには硬いアイスを食べようとしてプラスチック製のスプーンが折れたケースや、ラーメンのれんげがスープに沈んだケースなどの類例が並ぶ。
 2022年発売の1作目は八つの絵本賞を受賞し、23年の年間ベストセラーで総合1位に(トーハン調べ)。「大人は自分の失敗を語りたくなり、それを聞いて子どもも面白がる。絵本をきっかけに、経験談でも盛り上がるのでは」と鈴木さん。大人も子ども時代を思い出しながら、子どもと同じ立ち位置で楽しめる絵本になったと話す。
 大ピンチという言葉にも秘密がある。そもそも語呂の良さで採用したが、「大げさに言うことで失敗のリアリティーから距離を置くことができ、気持ちを落ち着かせる作用がある」。
 絵本のベースとなったのは、スマートフォンに残していた、鈴木さんの3人の子どもたちによる言い間違いや失敗談だ。
 1作目の表紙となった牛乳をこぼしたまま固まる男の子は、次男がモデル。その場面を目の当たりにした鈴木さんは、大人にとってはささいな失敗でも、子どもの中ではさまざまな懸念や不安が渦巻き、取るべき次の行動に移れないのではないかと考えた。
 その一方で、大人が失敗後に処理したり、対処法を指示したりすることや、そもそも失敗しないように先回りすることは子どもの経験値を奪うことにもつながると指摘する。「ピンチについてもっと語って慣れてもらい、失敗するのは当たり前だと思ってほしかった」
 23年11月に出た続編「大ピンチずかん2」ではピンチの原因を「ドキドキ」「ふあん」「はずかしい」など6項目に分けたグラフを採用。「大ピンチも、心の持ちようで捉え方が変わる」とのメッセージも込めている。
 気持ちさえ乗っていれば、普段は素通りしてしまうことにも興味が湧き、思わぬ発見があるかもと鈴木さん。「ピンチの時に限らず、今を楽しむ心の持ちようは大切です」

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