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テーマ : 長泉町

経済論以前に幸福論、支援対象はどの層? どうする少子化 国と地方ができることとは⑤しずしんニュースキュレーター 読者の意見【賛否万論】

 深刻さを増す少子化問題には、子育てを終えた60代以上の関心も高いようです。こうした世代の「若者にもっと支援を」という意見は、当事者世代の訴えと同様に貴重で、興味深いです。前回に続き、キュレーターと読者の投稿を紹介します。

キュレーター 江口裕司さん(三島市) メーカーで米国勤務後、設計、製造、調達、翻訳、ISO、社内教育など多様な業務に携わり定年退職。現在、パートの傍ら大学再入学を目指し勉強中。64歳。

   「未来の年表」(講談社現代新書)の著者、河合雅司氏は人口減と少子化による国の衰退リスクを「静かなる有事」と名付け、「未来の母親が既に減ってしまっている限り出生率が改善しても出生数は増えない。だから社会を切り替えるしかない」と次世代にメッセージを発信している。縮むしかないなら「戦略的な縮小と成熟」を目指すべきというわけだ。

 私は晩婚ならぬ晩離婚だが、一つだけ良かったことがある。2人の子どもの父親になれたことだ。良くも悪くも私の性格を受け継ぎながら別の人格を模索し、彼らなりに人生を歩んでいる。その過程を陰で応援することで私自身の人生も別の輝きを取り戻そうとしている。偉そうに言える立場ではないが、子育ては人生最大の学習機会。その経験が多いほど自分も成長できそうだ。昭和の時代、裕福でなくとも多産の大家族で子どもに囲まれていたのは、暗黙裏にその幸福感に導かれていたからと思える。
 職場の20代の女性に聞いてみた。彼女は近々結婚予定だが、子どもは1人でいいと言う。「1人で」との理由に経済的な事情を挙げていたが、共働きで帰宅時間も異なり夫婦で生活を楽しむ余裕を感じられないことも理由に挙げていた。結婚生活への不安による心理的な萎縮が感じられる。本当に次元を超えた経済的支援でなければ彼女は説得できない印象だ。
 国も地方も少子化対策はいろいろあるが、一般化するなら経済的支援である。しかし経済的支援は対症療法であり根治療法ではない。問題の本質は伊藤元重氏が静岡新聞5月10日付「論壇」で述べるとおり、行動経済学の知見で理由を掘り下げるべきだ。財源確保という手段が目的化しないよう建設的な議論を願いたい。
 「戦略的縮小」は行政に期待する一方、「成熟」は国民の意識に関わる、いわば幸福の価値観の問題であろう。結婚して子育てできれば幸せ、と思えなければ経済的支援策は功を奏しない。
 少子化は、経済論以前に幸福論の議論を社会に要求していると思う。

 ■読者 ひまじんさん(磐田市)67歳

 政府が発表した少子化対策は、既婚の夫婦への経済的支援が中心だ。これは少子化の抜本的な解決策ではないような気がしている。
 少子化問題の根っこにあるのは、若い人たちが結婚や子育てをネガティブにしか考えられない価値観だろう。婚姻件数が増えれば必然的に子どもは増えていく。しかし最近の風潮を見ていると、結婚にとらわれず1人で自分の思うように生きる生き方がもてはやされている。非婚率は年々増え続け、結婚しないことが当たり前の世の中に向かっている危機感さえ覚える。これは「結婚して子どもを育てることはこんなに大変ですよ」というような伝え方をするマスコミにも責任の一端はある。
 非婚化が少子化に直結しているとすれば、限りある予算を非婚化対策に振り向けることが少子化のスピードを緩やかにする近道ではないのか。既婚の夫婦にもう1人子どもを増やしてもらうのも大切だが、結婚しない人を減らすのはそれ以上に急務である。

 ■読者 川島理志さん(浜松市浜北区)79歳

 少子化は総力を挙げて取り組む喫緊の課題です。問題解決を国、県市町に任せればいいのでしょうか。民生委員を担当時、幼子と乳幼児を育てる母親が、自身が体調不良でも病院に行けないことに出合いました。小学生低学年の下校見守りで、共働きの家庭が多く、鍵を持たされる子が何人かいます。
 浜松市では、多くの地区にボランティア団体「家事支援の会」があります。私も立ち上げに協力しました。部屋の掃除、買い物、ゴミ出しなどが支援内容です。子育て支援を充実していただき、手厚い応援ができれば安心して子どもと向き合えるはずです。
 私の子どもの頃は親が留守のとき、隣家が面倒を見てくれました。核家族化されている現在は近隣の交流が希薄で、子育て家庭が孤立しています。少子化傾向は30年になるといいます。われわれが現役の頃からで、責任の一端を感じます。声掛けをして、できる範囲の応援をしようではありませんか。  

キュレーター   キュレーター 玉置麻菜美さん(浜松市) Yui support株式会社代表取締役。地産地消給食や、オリジナルブランドイチゴ「結苺」の事業を展開している。インスタグラムのアカウントは@yui.shizuoka

   私自身、結婚したのが早く、結婚してすぐに子どもに恵まれました。育てるのは大変だよ、2人も3人も産むと大変!と言われたことも多くあり、実際、今の状況に、息子や娘に同じようなことを言ってしまうかもと思っています。
 また、「結婚しないから」「女性が子どもを産まないから」少子化になるんだという雰囲気が、さらに状況を悪くしている気がします。
 結婚や出産以前に、今の現役世代が社会のために頑張っても報われないような環境であれば、現在の10代、20代の選択肢はどうなるでしょうか? 希望も余裕もない状態では自分だけを守ることしかできないのが普通です。社会的なデメリットが多ければ結婚しない、子どもを産まない選択をすることも当然です。男性女性に関係なく、全ての人が社会のために働くことにより、個人にしっかりとメリットとして返ってくることでさまざまな選択肢につながり、さらに子育てしやすい環境があってこそ、結果的に少子化が改善されることが理想ではないでしょうか。
 社会が本当に少子化対策として積極的に動くのであれば、これから働こうという世代が働きたいと思える環境をつくり、働くことで豊かな人生を自分で選択できる環境を与えてほしいと思います。
 次世代を温かく見守ることができる余裕を、今現在の働き世代にも与えられたら、なお早く問題は改善されるかもしれないと感じます。

 ■読者 レモンさん(浜松市)60代

 子どもを産んだら相手の男性から養育費が自動的に振り込まれる制度をつくり、不足分は国が補助するなど、子どもをみんなで育てる環境をつくることが必要だと思う。高校、短大、大学に託児所をつくり、それら年代の出産と生活を支援することも必要。この時期妊娠しても出産につなげることができない人も多くいるのでは…と思います。
 安心して出産でき、学校も続けられ、就職もキャリア形成もできれば、出産する人は増えると思います。もちろん結婚もできればそれも良いけれど、女性1人でも子どもを育てられる環境も大切と思います。

 ■読者 アルコイリスさん 75歳

 少子化問題の背景には、過去の誤った労働者派遣法改正があります。あのとき「あぁ、これで不景気になる」と思いました。結果、若者の非正規雇用が増えてしまった今、明るい未来がないことで未婚率が高く、少子化が顕著に表れています。このままではいずれ将来の年金にも響くでしょう。清水も静岡も商店街はシャッター通り。景気を良くするには、やはり若い人を正社員にすることです。給付金を配るだけでは改善しません。

 ■読者 大島宏幸さん(長泉町)60歳

 「少子化 twitter」で検索してみたら、準富裕層という言葉が目に留まった。中流=準富裕層という意見があり、驚いた。景気悪化でそういう感覚になりつつあるのか。中流家庭という言葉で思い出すのは「下流の宴」(林真理子著)。今の世の中、賃金が増えずに物価は上昇。もはや中流と言える家庭も減っていないだろうか。
 20代の若者が団塊ジュニアを「逃げ切り世代」と感じるとの記事を読んだとき、私自身が、一回り上の世代は年金が多くていいなと感じていた。20代から見れば、団塊ジュニアですら、うらやましいのか。
 経済的余裕がないというのがZ世代のリアルな本音だろう。国と地方が行う子育て支援策は準富裕層向けではなかろうか。そうならば、失敗していると思う。若者が結婚しない、子どもは欲しくないという気持ちが強ければ、少子化に歯止めがかからない。支援のターゲット層が違っていないかな?

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