台風15号、史跡に爪痕 小島陣屋跡/三池平古墳など甚大被害
9月の台風15号の影響で、静岡県内の国、県指定文化財の敷地内で斜面崩壊などが発生し、近隣住宅も含めて大きな被害が生じている。静岡市の16日までの調査では、清水区の国指定史跡「小島陣屋跡」で土砂や石垣が崩れ、隣接する民家3棟の外壁を突き破った。同区の県指定史跡「三池平古墳」は地滑りで延長約40メートルの亀裂が生じた。両史跡とも、近隣世帯が安全のために避難し、被害の拡大防止が求められている。
小島陣屋は1704年、駿河国小島藩藩主の松平信治が設置。城郭を思わせる石垣が良好に残り、大名陣屋の構造を知る上で貴重と評価され、2006年に国史跡として指定された。台風で被災したのは「馬場石垣」と呼ばれる高さ10メートル以上の斜面で、推定約400立方メートルの土砂が崩落。民家敷地に流れ込んだ土砂の除去作業を行っている。
一方、三池平古墳は5世紀前半ごろに築かれた有力豪族の墓とみられる全長65メートルの前方後円墳。多くの装身具や副葬品が出土し、市埋蔵文化財センターで保管、展示している。台風では古墳本体の前方部から周辺部にかけて約40メートルの亀裂が生じ、一部には30~60センチの段差もある。市は「古墳の範囲を超えて広く亀裂が走っている。丘陵で地滑りが起きた可能性がある」とみて、通常は自由に見学可能な同古墳を安全のため立ち入り禁止とした。
市は両史跡の今後の崩落を防ぐため、本年度中にボーリング調査を実施した上で、複数年かけて斜面の保護工事を行う予定。
国・県文化財22件に被害
静岡県は16日現在、台風15号で被害を受けた国、県の指定文化財として22件を把握している。内訳は国の指定文化財が16件、県の指定文化財が6件で、指定地内の土砂崩れや地滑り、土砂流入が多くを占め、消火設備の配管破損や電気系統の不具合もあった。
国の指定文化財は国、県、市町と所有者、県の指定文化財は県、市町と所有者の間で、修復の方法や費用負担について検討する。
県が被害を把握している文化財は次の通り。
【国指定】史跡 賤機山古墳(静岡市葵区)久能山(同市駿河区)小島陣屋跡(同市清水区)東海道宇津ノ谷峠越(同市駿河区、藤枝市)島田宿大井川川越遺跡(島田市)菊川城館遺跡群(菊川市)横須賀城跡(掛川市)光明山古墳(浜松市天竜区)▽名勝 臨済寺庭園(静岡市葵区)柴屋寺庭園(同市駿河区)清見寺庭園(同市清水区)日本平(同)▽重要文化財 臨済寺本堂(同市葵区)久能山東照宮末社日枝神社本殿(同市駿河区)霊山寺仁王門(同市清水区)▽重要伝統的建造物群保存地区 焼津市花沢(焼津市)
【県指定】史跡 三池平古墳(静岡市清水区)東海道菊川坂石畳(島田市)勝間田城跡(牧之原市)▽名勝 木枯森(静岡市葵区)▽有形文化財・建造物 静居寺伽藍(島田市)友田家(隠居家)住宅(森町)