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テーマ : 森町

「森の石松」と浜北 伝承に危機 コロナ、会員高齢化… 周知活動に限界も

 清水次郎長の子分で年配者を中心になじみの深い侠客(きょうかく)の「森の石松」。浜松市浜北区で別の侠客に討たれたとされ、区内には石仏があるが、地元でも知る人は少なくなっている。一部の住民グループは新型コロナウイルスの感染拡大で中断していた周知活動を再開した。ただ、会員の高齢化などで取り組みの拡大は難しくなっている。

遠州山辺の道の会会員(右)の話を聞く街歩きイベントの参加者。森の石松と浜北とのつながりを初めて知ったという人もいた=1月下旬、浜松市浜北区の道本子安堂
遠州山辺の道の会会員(右)の話を聞く街歩きイベントの参加者。森の石松と浜北とのつながりを初めて知ったという人もいた=1月下旬、浜松市浜北区の道本子安堂
森の石松のために作られた石地蔵
森の石松のために作られた石地蔵
遠州山辺の道の会会員(右)の話を聞く街歩きイベントの参加者。森の石松と浜北とのつながりを初めて知ったという人もいた=1月下旬、浜松市浜北区の道本子安堂
森の石松のために作られた石地蔵


 1月下旬、遠州鉄道美薗中央公園駅と小林駅間にある道本子安堂を、地元のボランティアグループ「遠州山辺の道の会」が街歩きイベントの一環で紹介した。安置された森の石松のための石地蔵は首がなく、ばくちに強い石松の伝説にあやかろうと、一部が削られ、持ち去られたとみられる。同市南区の馬渕豊さん(68)は「父親が浜北の出身だが、地蔵があるのは初めて知った」と話した。
 コロナ禍で街歩きイベントが開催できなかったため、同グループが森の石松の石仏を紹介するのは3年ぶり。同区では別の団体も顕彰に取り組んだが、近年は会員の高齢化などにより目立った活動は見られず、市が関わるような普及行事もない。山辺の道の会の酒出明敏事務局長(65)は「侠客ということもあり、自治体が宣伝するのは難しい面もある。私自身も年を取り、石松と浜北とのつながりを伝える機会は限られる」と明かす。
 地域資源の観光活用などに詳しい静岡県立大ツーリズム研究センター長の八木健祥教授は「教科書では伝えにくいことでも、総合的な学習という授業で児童生徒に語り継ぐことはできる」と指摘。一方でこうした授業も、最近はキャリア教育やSDGs(持続可能な開発目標)関連の学びに押され、地元の古老に歴史を語ってもらうといったことは少なくなっているという。「郷土に親しむ機会が失われれば、若い人がふるさとへの愛着をなくすことにもつながりかねない」と懸念を示す。

 <メモ>森の石松は侠客らを描いた映画や講談などで愛嬌(あいきょう)のある人物として語られ、かつては大衆に親しまれた。県内では森町出身と伝わり、同町の寺院「大洞院」には墓がある。同町観光協会によると町内では例年、供養祭が営まれるほか、3年に1度の行事ではシャトルバスが出るほどにぎわう。同協会担当者は「森の石松は町の観光発展に寄与したとされ、年配者を中心に親しまれる存在だ」と説明する。

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