裾野市活性化へ高まる期待 トヨタ未来都市の建築本体工事開始で 市、連携強化の方針
トヨタ自動車が計画する次世代技術の実験都市「ウーブン・シティ」の建築本体工事が11月、裾野市で始まる。2024~25年の一部供用開始に向け、同市は最寄りのJR岩波駅周辺を再整備するとともに、ウーブンと連携して研究・開発部門などの企業誘致を強化する方針。人口減少に直面する市にとって、地域活性化の起爆剤として期待される。
ウーブンは20年末に閉鎖した自動車生産工場の跡地に建設する。地元不動産業者は「岩波駅周辺は人通りが減り、飲食店などが閉店した。ウーブンで駅利用者が増えれば、にぎわいが戻るのでは」と望む。
同年末に5万1216人だった同市の人口は減少の一途をたどり、今年9月には約30年ぶりに5万人を下回った。ウーブンには将来的に2千人以上が居住する計画で、視察者や観光客も多く訪れるとみられる。
同市は豊富な富士山の地下水と首都圏から近い立地をいかし、輸送用機器をはじめとした「ものづくりのまち」として発展してきた。一方、経済のグローバル化で大手製造業の新規誘致はきわめて難しくなり、現実的な戦略の見直しを求められている。
市は9月に策定した企業立地方針で、ウーブン周辺に次世代産業と新技術開発の集積を目指す考えを盛り込んだ。村田悠市長は「50年間、自動車製造の場として活躍した土地が新たなテクノロジーを産む場所として生まれ変わる。連携を強めていきたい」と話す。
シンクタンク「企業経営研究所」(長泉町)の中山勝理事長はウーブンとの連携について「ピンポイントに考えるのではなく、域内経済圏の広い発想で検討する方が波及効果は高まる」と指摘。健康関連産業の振興を図る県東部のファルマバレー構想や、周辺市町を巻き込んだ広域連携を呼び掛ける。