テーマ : 読み応えあり

ヤングケアラーを支えるには 悩みの相談先は複数必要、予防による対策も提案

 大人に代わって日常的に家事や家族の世話をするヤングケアラー。肉体的、精神的な負担が大きくなって学校を休みがちになったり、健康に影響が出たりするケースがあり、適切な支援と対策が求められている。ポイントを専門家に聞いた。

川内潤さん。「話を聞くだけでも、ヤングケアラーのサポートになる」
川内潤さん。「話を聞くだけでも、ヤングケアラーのサポートになる」
宮崎成悟さん。「ケア自体は悪いことではない。負担が過度になって、いろんなことを諦めたり、本来やるべきことができなくなったりするのが問題」
宮崎成悟さん。「ケア自体は悪いことではない。負担が過度になって、いろんなことを諦めたり、本来やるべきことができなくなったりするのが問題」
ヤングケラーとは
ヤングケラーとは
主な相談窓口
主な相談窓口
川内潤さん。「話を聞くだけでも、ヤングケアラーのサポートになる」
宮崎成悟さん。「ケア自体は悪いことではない。負担が過度になって、いろんなことを諦めたり、本来やるべきことができなくなったりするのが問題」
ヤングケラーとは
主な相談窓口

 「ヤングケアラーの前に、どれだけ『支援の糸』を垂らせるかが大事」と話すのは、一般社団法人「ヤングケアラー協会」(東京)代表理事の宮崎成悟さん(33)。自身は10代で母親のケアを担うようになり、大学進学をいったん見送った。
 子どもが悩みを相談できそうな身近な大人といえば「学校の教諭」が思い浮かぶ。だが、相談先が一つだけでは不十分で、近所の人や行政、同協会のような支援団体など、複数の選択肢があることが大切だという。宮崎さんは、埼玉県が県内のヤングケアラーと保護者を対象に開設したLINE(ライン)相談窓口の相談員も務めている。
 ヤングケアラーは数年前に社会的課題として認識されるようになった。国や自治体の支援は始まったばかり。相談先が教諭に限られ、悩みを打ち明けられなければ孤立してしまう恐れがある。
 「行政が支援に着手しているのは(主に)18歳未満で、それ以上の年齢にはなかなか支援がない状況。相談者とつながっておき、2、3年後に再び壁にぶち当たった時に相談できるような態勢を整えておくことも大事だと思う」
 幼いきょうだいの世話や家計を支えるためのアルバイト…。ヤングケアラーが置かれた状況はさまざまだ。祖父母の世話の担い手となっているケースでは、NPO法人「となりのかいご」(神奈川)代表理事の川内潤さん(42)は「予防」による対策を提案する。
 例えば、こんなケースが当てはまる。遠くで暮らす祖母に介護が必要になり、同居することに。共働きの両親の負担を減らそうと、子どもが祖母の世話を始める。親に褒められ、さらに熱心に取り組むが、睡眠時間は削られ、授業中に寝たり、宿題を忘れたりと学校生活に支障が出てしまう―。
 「『親が1人になったら呼び寄せるのが当然』と思っていると、ヤングケアラーはどんどん生まれる」と川内さん。同居や近居の介護にはリスクが潜んでいることを大人が理解し、介護保険サービスなど地域の“力”を積極的に活用して距離を取ることを予防策として勧める。
 ヤングケアラーになると、自分の介護のやり方が悪いから老いが進んだと思い込み、自己肯定感が低くなる恐れも指摘されている。「子どもが『やってあげなければ』と思うのは自然なこと。そう思わせる環境にしないことが大切です」

いい茶0

読み応えありの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞