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テーマ : 長泉町

芸術と向き合った原点 ベルナール・ビュフェ美術館/ベルナール・ビュフェ「ナンス」1951年【コレクションから③】

 19歳の若さで批評家賞を受賞し、瞬く間に戦後のフランス具象絵画を代表する存在になったベルナール・ビュフェ。無口で人嫌いのビュフェは、有名になったことで生じたさまざまな煩わしさから逃れるようにパリを離れ、南フランスにたどり着く。彼が気に入ったのは、プロヴァンスの光あふれるのどかな農場でも瀟洒[しょうしゃ]なコテージでもなく、木も傾[かし]ぐような北風の吹きすさぶ大地にぽつんと立つ、羊の牧舎だった。

ベルナール・ビュフェ美術館ベルナール・ビュフェ「ナンス」(1951年)
ベルナール・ビュフェ美術館ベルナール・ビュフェ「ナンス」(1951年)

 ビュフェはパートナーのピエール、そして犬、猫、アヒル、ニワトリなどの動物たちと一緒に、4年ほどこのナンスの小屋をアトリエにして暮らした。人里離れ、自然とともに寝起きする暮らしをすっかり気に入ったビュフェは、「僕はもう農民画家になる」と当時の手紙に書いたほどであった。
 このアトリエでビュフェは制作に没頭。パリのアパルトマンではかなわなかった大型作品の制作にも取り組み、多くの傑作を生みだしている。ここは20代半ばのビュフェが自らの芸術と向き合い、自分を研ぎ澄まして制作に打ち込んだ原点ともいえる場所。この絵には今もそのときの風が吹いている。(雨宮千嘉/学芸員)

 メモ 駿東郡長泉町東野515の57<電055(986)1300>
    「ナンス」は11月7日まで開催中の所蔵品展に出品。

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