子宮頸部 予防の重要性を強調【詳しく理解がん治療 静岡がんセンター公開講座㊦】
子宮の入り口にできる子宮頸(けい)がんは「最も予防しやすいがん」とされるが、20~30代の若い世代を中心に増加傾向にある。日本の検診受診率は約40%で、多くの先進国が70~80%の中、受診率の低さが長年大きな課題となっている。
国内の年間罹患(りかん)者数は約1万人、死者数は約3千人。子宮頸がんは、ほとんどが性交渉などによるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染で起きる。HPVは生涯に女性の8割が感染し、このうちの一部が発症する。「発生原因が分かっているため、いかに予防するかが重要」-。県立静岡がんセンターの武隈宗孝婦人科医長はこう話す。一番の予防策は、症状が現れる前にがんを発見するスクリーニング、がん検診だ。子宮入り口付近の細胞を採取する細胞診は数分ででき、他の臓器と比べ検診時間は短い。検診を受けていれば早期段階での治療や子宮の温存にもつながる。
日本産科婦人科学会は、がん検診で早期発見・治療を目指す2次予防とともに、がん化の原因であるHPVの感染を防ぐ1次予防も呼びかけている。厚生労働省は今年4月、HPVの予防ワクチン接種について、積極的な接種勧奨を再開した。予防ワクチンは、接種後に全身の痛みなどを訴える例があり、この副反応問題で厚労省は2013年6月から積極勧奨を見合わせていたが、ワクチンの効果や安全性に関する知見が得られ約9年ぶりに再開された。県内の自治体でも、この差し控え期間に接種機会を逃した女性のキャッチアップ接種や、自費で接種した対象者への償還払いなどの動きが進む。
世界保健機関(WHO)の試算では、30年までに90%のワクチン接種と70%の検診が達成されるなどすれば、90年には子宮頸がんが撲滅するとしている。武隈医長は「ワクチン接種と検診受診の向上が予防の両輪として欠かせない。国レベルでの啓発活動が必要」と訴える。
(この連載は東部総局・水野紗希が担当しました)