テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

【袴田さん再審公判】3日間の証人尋問終了 血痕黒褐色化「揺るがしようのない立証」 弁護団総括

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(88)の再審第12回公判が27日、静岡地裁(国井恒志裁判長)であった。証人尋問の最終日を迎え、検察・弁護側双方の証人計5人全員に同時に尋ねる「対質」が行われた。1年以上みそに漬かった血痕の色調という争点を巡り、弁護側証人の3人は専門的知見を踏まえて赤みは失われて黒褐色化すると改めて証言。検察側証人からも弁護団の主張に沿うような見解が示され、弁護団は公判終了後の記者会見で「揺るがしようのない状況まで立証できた」と3日間を総括した。

公判終了後に記者会見する(右から)袴田ひで子さん、旭川医大の清水恵子教授、奥田勝博助教、北大の石森浩一郎教授、間光洋弁護士=27日午後、静岡市葵区
公判終了後に記者会見する(右から)袴田ひで子さん、旭川医大の清水恵子教授、奥田勝博助教、北大の石森浩一郎教授、間光洋弁護士=27日午後、静岡市葵区

 対質は証言台の前に五つの椅子が並べられ、裁判官が証人5人に質問する形で始まった。乾燥の程度やみその醸造過程で低酸素濃度になることが黒褐色化する阻害要因となるかどうか、各種実験では低酸素状態で血痕が黒褐色化したことの要因などを尋ねていった。
 犯行着衣とされる「5点の衣類」が事件発生直後にみそタンクに入れられた場合、付着した血痕はみそが仕込まれるまでの約20日間で黒褐色化するかを問われた弁護側証人の石森浩一郎北海道大教授(物理化学)は「逆に赤みを維持させる条件を考えたとき、どれもタンク(の状況)に合わない」と答えた。検察側証人の池田典昭九州大名誉教授(法医学)も「20日間で黒くなるのは当たり前」と同調。5点の衣類は赤みがある状態で発見されたことを重ねて聞かれ「(発見の)直前に(タンクに)入れられた」との見方を示した。
 一方で、検察側証人の神田芳郎久留米大教授(法医学)は、みそタンクで1年以上置かれた衣類の血痕に赤みが残りうるかについて「条件があまりに分からないが、可能性で言えば、ないとは言えない」とした。


「裁判官の英知に任せる」 弁護側証人3人が会見  再審公判終了後の弁護団会見は、証人を務めた北大の石森浩一郎教授、旭川医科大の清水恵子教授、奥田勝博助教も同席した。清水教授は「最後は裁判官の英知にお任せしたい。様子を拝見していると、任せて安心ではと個人的には思っている」と手応えを語った。
 再審開始の決め手となった清水教授らの鑑定について、検察側は「根拠が伴っていない」と批判する久留米大の神田芳郎教授ら法医学者7人による共同鑑定書を再審公判に提出した。ただ、この鑑定書は実験もせず3回のウェブ会議でまとめられた。清水教授は公判での証言を繰り返し「血痕に赤みが残る可能性があるというのは抽象的な仮説。実証実験を通して示していただきたい」と反論した。
 検察側の証人2人は法医学者。石森教授は「物理化学が分かる人を呼んで議論するのが正しいやり方。どうしても議論がかみ合わない部分があった」と話した。
 間光洋弁護士は「共同鑑定書は有罪立証を支えるような証拠ではなく、これで踏み切った検察組織の問題性が浮き彫りになった3日間だった」と怒りをにじませ、袴田さんの姉ひで子さん(91)は「一山も二山も三山も超えた」と喜んだ。

袴田さん再審 特設サイト開設 裁判の最新状況/事件の歴史をチェック
▶特設サイト「我れ敗くることなし 袴田巌 再審への道」

袴田さん「再審」 最後の砦の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞