テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

信じた57年、今度こそ 初出廷の姉、力強く主張 袴田さん再審開始

 「弟、巌に代わりまして無実を主張いたします」「真の自由をお与えくださいますようお願い申し上げます」。57年にわたり訴え続けた言葉が、静岡地裁の202号法廷に響き渡った。27日に同地裁で始まった袴田巌さん(87)の再審公判。袴田さんの姉ひで子さん(90)は補佐人として証言台に立ち、3人の裁判官に向かって弟の潔白を力強く主張した。今度こそ訴えは実るのか―。無罪判決を勝ち取る闘いのゴングが鳴った。

袴田巌さんの再審初公判を終えて記者会見する姉のひで子さん=日午後6時分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて記者会見する姉のひで子さん=日午後6時分、静岡市葵区
記者会見で質問に答えて頭を下げる袴田巌さんの姉ひで子さん(中央)=日午後6時分、静岡市葵区
記者会見で質問に答えて頭を下げる袴田巌さんの姉ひで子さん(中央)=日午後6時分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて記者会見する姉のひで子さん(右から2人目)と弁護団=日午後6時分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて記者会見する姉のひで子さん(右から2人目)と弁護団=日午後6時分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて静岡地裁を出る姉のひで子さん(中央)=日午後5時1分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて静岡地裁を出る姉のひで子さん(中央)=日午後5時1分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて記者会見する姉のひで子さん=日午後6時分、静岡市葵区
記者会見で質問に答えて頭を下げる袴田巌さんの姉ひで子さん(中央)=日午後6時分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて記者会見する姉のひで子さん(右から2人目)と弁護団=日午後6時分、静岡市葵区
袴田巌さんの再審初公判を終えて静岡地裁を出る姉のひで子さん(中央)=日午後5時1分、静岡市葵区

 検察官と弁護団は午前11時の開廷直後から火花を散らした。検察官が袴田さんに関する住居侵入、強盗殺人、放火の罪の起訴状を読み上げた後、弁護団は専務を除く家族3人の殺害現場とした「居間」が具体的にどの部屋を指すのかなど、判然としない点について釈明を求めた。袴田さんの無罪を主張する弁護団の冒頭陳述を遮り、検察官が異議を唱える場面もあった。
 検察官は「犯人がみそ工場関係者であることが強く推認される上、証拠から推認される犯人の事件当時の行動を被告人が取ることが可能であった」と主張し、関連する証拠の要旨を説明した。弁護団は犯人が着ていたとされる雨がっぱに血痕が付着していたことを証明する鑑定書について、再三の開示請求にもかかわらず、これまでの公判で一度も示されなかった証拠だと指摘。角替清美弁護士は「価値がないとされた証拠の提出は(一事不再理を規定する)憲法39条に反する」と異議を申し立てたが、国井恒志裁判長は退けた。法廷内のモニターに映し出されるのは白黒の現場写真やいかにも古い手書きの調書や報告書の数々。長い時の流れを感じさせる証拠を示しながら、検察官は57年前の“事実”を淡々と述べた。
 閉廷後に記者会見した弁護団の小川秀世事務局長は「検察官の冒頭陳述や主張は確定判決の内容の域を出ない。今までと同じで漫然と立証し、非常に憤りを感じる」と声を強めた。
 一方、初めての出廷だったひで子さんは「裁判ってこんなものかと。検事さんの言うことを聞いて、これじゃ57年もかかるわけだと思った」とひょうひょうと語った。この日に袖を通したのは2014年、静岡地裁が袴田さんの再審開始と死刑と拘置の執行の停止を決定した際に着ていたのと同じベージュの上着だった。「ともかくまだ始まったばかり。絶対に無実だと思っていますので、今後ともよろしくお願いします」。験を担いだ姉は高らかに支援者へ呼びかけた。
 (社会部・木村祐太)

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