テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

「海外から見た袴田事件は」 弁護団ら9月、イタリア・ドイツで課題や現状報告【最後の砦 刑事司法と再審】

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定し、無実を訴え続けて今春、裁判のやり直しが決まった元プロボクサー袴田巌さん(87)の弁護団員らが9月、イタリアとドイツで日本の再審制度の課題や死刑制度の現状を報告する。弁護団の戸舘圭之弁護士は「袴田事件には日本の刑事司法の問題が凝縮されている。世界的に見てどうなのか、というのは重要な視点。海外の見方から学んで考え、国内の議論を活性化させるきっかけにしたい」と話している。

ヨーロッパ犯罪学会に参加する戸舘圭之弁護士。「弁護活動に法理論は重要で、研究者や学会との交流はスキルを高めるためにも必要」と強調する=8月上旬、東京都内
ヨーロッパ犯罪学会に参加する戸舘圭之弁護士。「弁護活動に法理論は重要で、研究者や学会との交流はスキルを高めるためにも必要」と強調する=8月上旬、東京都内
ヨーロッパ犯罪学会に若手弁護士らを誘った石塚伸一龍谷大名誉教授。「司法改革の担い手を育てていくことが僕らの役目」と説く=8月上旬、東京都内
ヨーロッパ犯罪学会に若手弁護士らを誘った石塚伸一龍谷大名誉教授。「司法改革の担い手を育てていくことが僕らの役目」と説く=8月上旬、東京都内
ヨーロッパ犯罪学会に参加する戸舘圭之弁護士。「弁護活動に法理論は重要で、研究者や学会との交流はスキルを高めるためにも必要」と強調する=8月上旬、東京都内
ヨーロッパ犯罪学会に若手弁護士らを誘った石塚伸一龍谷大名誉教授。「司法改革の担い手を育てていくことが僕らの役目」と説く=8月上旬、東京都内


 イタリア・フィレンツェで9月6~9日に開かれる第23回ヨーロッパ犯罪学会で発表する。学会に先立つ4日は、ドイツ・ベルリンでワークショップを企画する。学会への参加を重ねてきた龍谷大名誉教授で一般社団法人刑事司法未来の石塚伸一代表理事が、袴田さんの再審開始が確定したことや龍谷大に刑事司法・誤判救済研究センターが新設されたことを踏まえ、日本の再審・死刑制度や誤判研究の現状報告を発案した。
 戸舘弁護士のほか、規定が乏しい再審法(刑事訴訟法の第4編再審)の改正活動に注力する鴨志田祐美弁護士(京都)や誤判研究に取り組む西愛礼弁護士(大阪)らに声をかけた。石塚さんは「人権意識が低いと言われる日本で、日の当たらない中でも再審法改正や死刑廃止に向けて努力している人がいることを世界中に知ってもらいたい。その“生き証人”を連れて行こうと考えた」と説明する。
 袴田さんは1日平均12時間の取り調べを受けた。見込み捜査や証拠の捏造(ねつぞう)も疑われる。「丁寧に捜査していれば、むちゃな取り調べをしなくて良かったし、真犯人にもたどり着けたのではないか。日本独自の自白強要は事件当時も現在も基本的に変わっていないと感じる」と戸舘弁護士。今月18日で逮捕から57年、裁判のやり直しを求めても認められるまで40年以上がかかった。「再審の扉がなかなか開かない現実も伝えたい」と言う。
 欧州連合(EU)は死刑廃止が加盟条件になっている。戸舘弁護士は「死刑制度がある国のえん罪という点でも袴田事件は象徴的。犯罪と刑罰を扱う学会で、どんな反応があるか個人的にも関心がある。意見交換し、日本国内にフィードバックしたい」と意気込む。
 ドイツでのワークショップはライブ配信を予定。
 (社会部・佐藤章弘)

 

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