テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

再審法「改正必要」185人 国会議員アンケート 自民回答率3%未満 【最後の砦 刑事司法と再審】

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)に関連し、静岡新聞社は、刑事訴訟法の再審規定(再審法)について全国会議員(711人)を対象にアンケートを実施した。回答した187人(回答率26・3%)のうち、185人が法の不備と法改正の必要性を認めた。改正する必要がないとした人はゼロだった。自民党議員(全380人)の回答率は2・9%、公明党(同59人)も15・3%にとどまったが、自公以外(同272人)は61・4%と差が見られた。

再審法に関するアンケートの回答状況
再審法に関するアンケートの回答状況

 再審法は19の条文しかなく、規定の不備が無実の人の救済を妨げているとして日本弁護士連合会が法改正を求めている。検察官の手元に残されたままの証拠が再審開始の可否を判断する再審請求審で新たに開示されたことで開始決定につながった例は多いが、検察官に開示を義務付ける条文はない。再審開始が認められても検察官は不服を申し立てることができるため、審理の長期化を招く要因になっているとの批判がある。
 実際、袴田さんの第2次再審請求審では600点もの証拠が開示され、2014年に静岡地裁が再審開始を認める原動力となった。しかし、検察官が再審開始決定に不服を申し立て、確定までに9年を費やした。
 回答した議員のほとんどが検察官に証拠開示を義務付ける必要性があるとの認識を示す一方、再審開始決定に対する不服申し立てについては「禁止する必要がない」「どちらかといえば必要ない」も計16人いた。
 袴田さんのように再審公判に移行すると審理が公開される。ただ、事実上の主戦場となっている前段階の再審請求審は、規定がないにもかかわらず公開された例はごくわずかしかない。「どちらかといえば」を含め94・6%の議員が請求審でも証人尋問などは公開の法廷で行うべきと答えた。
 アンケートは全議員の国会事務所に配り、23年11月中旬~12月中旬に行った。所属政党は調査開始時点に基づく。政務三役など立場を理由に回答を控えたり、質問には答えず「さまざまな角度から慎重な検討が必要」「議論を注視する」と記載したり、アンケート自体に答えていないとする議員が計19人いた。いずれも未回答者として集計した。
静岡県内議員 7人無回答  県内の国会議員で回答したのは、衆院は自民党の細野豪志氏(静岡5区)と塩谷立氏(比例東海)、公明党の大口善徳氏(同)、立憲民主党の源馬謙太郎氏(8区)と小山展弘氏(3区)、渡辺周氏(比例東海)、国民民主党の田中健氏(同)で、参院は自民の牧野京夫氏と若林洋平氏、国民の榛葉賀津也氏、無所属の平山佐知子氏の計11人。いずれも再審法は改正する必要があると答えた。
 自由記述で若林氏は「検察官の不服申し立てが解決に向けて長期になる原因となり、人権侵害の期間も長くなることにつながっているのは否めない」と指摘。源馬氏は袴田さんの再審を「再審法の見直しにつながるようにしなくてはならない。国会でしっかり取り上げていきたい」と記した。
 一方、衆院で自民の上川陽子氏(1区)は「外務大臣の立場にあり、所管外の事項についてのお答えは差し控えたい」と避け、深沢陽一氏(4区)も「外務大臣政務官として在職中であり、回答は差し控えたい」として無回答だった。
 自民の城内実氏(7区)と井林辰憲氏(2区)、勝俣孝明氏(6区)、宮沢博行氏(比例東海)、無所属の吉川赳氏(同)は返答しなかった。


※画像タップで拡大してご覧になれます

いい茶0

袴田さん「再審」 最後の砦の記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞