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与党議員の“沈黙” 法改正 目立つ無関心 何も答えないのが無難【最後の砦 刑事司法と再審⑱/第5章 国会議員アンケートより①】

 静岡新聞社が全国会議員(711人)を対象に実施した再審法(刑事訴訟法の再審規定)に関するアンケートで、与党議員(自民党・公明党)の回答率はわずか4・6%にとどまった。与党以外の議員が61・4%だったのとは対照的だ。日本弁護士連合会(日弁連)や冤罪(えんざい)被害者は法改正を求めるが、実現の鍵を握る与党議員の“沈黙”は何を意味するのか。

全国会議員を対象に実施した再審法に関するアンケート。与野党で回答状況に差が見られた
全国会議員を対象に実施した再審法に関するアンケート。与野党で回答状況に差が見られた
再審法に関するアンケートの回答状況
再審法に関するアンケートの回答状況
全国会議員を対象に実施した再審法に関するアンケート。与野党で回答状況に差が見られた
再審法に関するアンケートの回答状況


 自民党議員(380人、2023年11月の調査開始時)のうち、回答者はたった11人(回答率2・9%)に過ぎない。「外務大臣の立場にあり、所管外の事項についてのお答えは差し控えたい」と避けた上川陽子衆院議員(静岡1区)を含め、「そもそもどんなアンケートにも答えていない」「答えられない」旨を回答した13人を加えても所属議員の1割にも満たない。
 日弁連に再審法改正への「賛同メッセージ」を寄せている国会議員156人中42人は自民党(23年12月現在)。実際には賛同しているのかどうか表現が曖昧な議員も見られるが、法改正の必要性を明確に認めている議員でさえ、多くがアンケートに回答しなかった。
 公明党議員(59人)で答えたのは9人(15・3%)だった。政府は再審法について「現時点において直ちに手当てを必要とする不備があるとは認識していない」(小泉龍司法相)とする。公明党のある関係者は、回答率が低い背景として「政府への配慮」を示唆した。

 「政府として再審法を改正するつもりがない中、アンケートに答えるのはやめておこう、という判断が強く働いた結果だと思う」
 「政治家はなぜ質問に答えないか」「政治家のレトリック」の著書がある福岡工業大の木下健准教授(政治学)は、与党議員の受け止め方をそう推測する。賛否を示せば批判される可能性があり、賛成しても法改正に向けて行動する責任が生じる。「だから『何も答えないのが無難』となる」
 議員の中には「再審法の改正に取り組んでも票にならない」と言い切る人がいる。木下准教授は「政治は優先順位をどうつけるかであり、与党にとって再審法の改正は順位が低い。再選につながりにくいテーマでもあり、重要な問題だと認識されていない」とみる。

 自民党の古庄玄知参院議員(大分選挙区)は、再審法には不備があるとして改正の必要性を認める。アンケートでは、再審請求審で検察官に証拠開示を義務づけることや、再審開始決定への不服申し立てを禁じるべきと回答した。大分県弁護士会の会長を経験したベテラン弁護士でもある。
 「私は長年弁護士をしてきたから再審法に興味もあるし、おかしいと思うけれど、普通の国会議員にとっては遠い世界の話だとしか考えられないのでは。自分とは無縁の世界だ、と」
 国は犯罪被害者の支援に力を入れるが、国が「加害者」となる冤罪被害者の支援や救済には消極的だとの指摘がつきまとう。政治主導で再審法の改正に道筋をつけることはできるのか。古庄氏にそう尋ねると、否定的な見解が返ってきた。
 「かなり難しいのではないか。早い話が、自民党の大物議員が何人同調してくれるかだ。でも現状は、議員の多くは興味を持っていないから(立法化は難しい)」

 静岡新聞社のアンケートでは、回答した国会議員187人(回答率26・3%)のうち、185人が法の不備と法改正の必要性を認めた。改正する必要がないと答えた人はいなかった。ほとんどの人が再審請求審において検察官に証拠開示を義務づけるべきだとした一方、再審開始決定への不服申し立てを禁止するかどうかは「禁止するべき(どちらかといえばを含む)」が156人、「禁止する必要はない(同)」は16人とやや違いが表れた。

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