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支持者意識と隔たり 司法への干渉と敬遠か【最後の砦 刑事司法と再審⑲第5章国会議員アンケートより②県民調査との比較】

 静岡新聞社が2023年12月に18歳以上の静岡県民617人を対象に行った意識調査で、再審法制を整えるべきと回答したのは65・5%だった。前年より7・6ポイント上昇した。整える必要がないとしたのは3・9%。逆に2・8ポイント少なくなった。

静岡県民意識調査より 再審法制を整える必要があるかどうか/再審法制の見直しに対する政府与党の姿勢
静岡県民意識調査より 再審法制を整える必要があるかどうか/再審法制の見直しに対する政府与党の姿勢

 再審法制の見直しについて政府・与党の姿勢を問うと、「検討している姿勢は全く見えてこない」「あまり見えてこない」が72・3%と圧倒的。支持政党別に見ると、自民党支持者の60・1%が、公明党支持者の71・4%がそう答えていた。
 一方で再審法に関する国会議員アンケートでは、自民党議員のうち答えたのは2・9%。公明党議員は15・3%に過ぎなかった。与党を支持する有権者の多くが再審法の見直しを求めているが、自らの口で語ろうとしない与党の政治家とは意識に大きな隔たりがあることが浮き彫りになった。
 「まず、再審法が身近な法律ではない。加えて、三権分立の考え方を誤解している人も多い」。自民党の鈴木貴子衆院議員(比例北海道)は、多くの議員の認識をそう説明する。与党議員でも再審法についての持論をしっかり語れる議員は少数ながら、いる。再審法の課題に詳しく、法改正を長年にわたり訴えてきた。
 「袴田巌死刑囚救援議員連盟」の事務局長も務めている鈴木議員。大方の議員は「司法の判断に口を挟むことはできない」と考えているように思えるという。「本来は必要に応じて適切に声を上げること、チェックすることが求められている」。しかも再審法は司法の判断そのものではなく、冤罪(えんざい)被害者を救済するための仕組みだ。
 他方、公明党のある議員は「法務省と日弁連ではスタンスが根本的に違う」と指摘。日弁連が全面的な改正案を公表したのに対し、法務省は「確定判決による法的安定性の要請と個々の事件における是正の必要性との調和点をどこに求めるか」(小泉龍司法相)との立場を崩していない。とりわけ、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てについては、刑事局長が国会答弁で「抗告し得るということは公益の代表者として当然」と言い切っている。
 「法務省にも言い分があり、判断するためには双方の意見を聞かなくてはいけない」と公明議員。「刑訴法は大きな法律であり、簡単に議員立法で改正できるものではない」とも言う。
 どうすれば与党内で問題の重要性を共有でき、法改正につなげることができるのか。鈴木議員は、プロジェクトチームの立ち上げなど議論をするためのプラットフォームの存在が不可欠と考える。その上で「世論を巻き込み、法改正が急務かつ必須なのだというプレッシャーを法務省に与えていくこと」と道筋を描く。
 DNA型鑑定をはじめ、科学技術の進歩で冤罪が明らかになるケースもある。鈴木議員は「『時代に見合った』という観点一つをとっても法改正に資する。実際に日本で冤罪が起きている紛れもない事実がある以上、目を背けることはあってはならない」と語った。

 <メモ> 日本弁護士連合会は2023年2月、32年ぶりに再審法の改正案を公表した。法改正の必要性と緊急性について、①再審請求審の進め方が裁判所によってまちまちで「格差」が生じていること②証拠開示の規定がなく法制化が急務なこと③再審開始決定に対する検察官の不服申し立てによって冤罪被害者の早期救済が妨げられていること④再審請求審の長期化と請求人の高齢化―を挙げた。

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