テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

最大の争点「5点の衣類」とは 犯行着衣かねつ造か

 事件発生から1年2カ月後の1967年8月31日、現場近くのみそ工場で、タンク内から血痕が付着した白色半袖シャツ、ねずみ色スポーツシャツ、鉄紺色ズボン、白色ステテコ、緑色ブリーフが見つかりました。これらは「5点の衣類」と呼ばれています。


犯行着衣と認定も...「色」に疑問
 すでに始まっていた袴田さんの公判で、検察側はパジャマを犯行着衣だと主張していました。しかし、衣類の発見後に冒頭陳述を変更し、衣類を犯行着衣に改めました。袴田さん自身は当初から、自分の衣類ではないと訴えていました。控訴審では三度、ズボンの着装実験が行われましたが、いずれもはくことができませんでした。ただ、裁判所は、ズボンのすそを切った共布が袴田さんの実家から見つかったことを有力な根拠とし、犯行着衣だと認定し続けてきました。
 衣類の「色」に疑問を持ったのは支援者たちです。1年2カ月間みそに漬かっていたにしては血痕は赤く、衣類も生地そのものの色が残っている-。弁護団と支援者はさまざまな条件下で実験を重ねた結果、衣類は「捏造(ねつぞう)された証拠」だと確信しました。

ねつ造の疑い「極めて高い」
 2014年に袴田さんの再審開始と死刑・拘置の執行停止を認めた静岡地裁決定は、みそ漬け実験の結果も踏まえ、5点の衣類は捜査機関によって捏造された疑いが相当程度あると言及。実家で見つかったズボンの共布についても「捏造の疑いが強まった」と指摘しました。さらに、検察側の即時抗告を棄却し、地裁の判断を支持した23年の東京高裁決定も、衣類が捏造された可能性が「極めて高い」と踏み込みました。
 静岡地裁で現在開かれている再審公判で、検察側は衣類の捏造を強く否定しています。地裁が判決でどのような判断を示すかは、大きな焦点と言えるでしょう。
 (社会部・佐藤章弘)

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