テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

「5点の衣類」血痕 検察「不自然でない」弁護団「赤み消える」 袴田さん再審で主張、けん制

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)のやり直しの裁判(再審)は15日、犯行着衣とされる「5点の衣類」に関する審理が本格化し、ヤマ場を迎えた。弁護団が「衣類が1年以上みそ漬けにされたことが間違いない、との証明なくして有罪はない」とくぎを刺す中、検察側は「犯行着衣だと指し示すさまざまな証拠がある。付着した血痕に赤みが残る可能性があれば、犯行着衣だと否定されない」と主張を始めた。

 「赤みが残る抽象的な可能性しか立証できないと暗に認めた」。公判終了後の記者会見で、弁護団の間光洋弁護士は検察側の冒頭陳述をそう評した。これまで第2次再審請求審での最高裁の差し戻し決定(2020年)を踏まえ、検察側の立証命題を「合理的な疑いを超えて、衣類が1年以上みそ漬けされていた事実を証明すること」とけん制してきた。それだけに、「検察は独自の判断基準を設定し、論点の重要性を低くした。どんな見立てで有罪立証しようとしていたのか。間違っているし、許せない」と憤った。
 検察側は再審公判で、日本法医学会理事長の神田芳郎久留米大教授ら法医学者7人の共同鑑定書を準備。「弁護側の『衣類は(捏造(ねつぞう)だ』との主張が、科学的に間違っていると言うための重要な証拠」(静岡地検の奥田洋平次席検事)と位置づける。一方、弁護団の笹森学弁護士は「実験もせずに『赤みが残る可能性』だけを言っていて、検察は抽象的な可能性で良いと居直った。弁護団の圧勝だ」と語った。
 検察側は、5点の衣類のカラー写真を「大まかな色合いの傾向を把握するにも不適当な資料」と指摘したほか、血痕の見え方は観察条件によっても差が生じることなどを強調した。しかし、間弁護士は「ふわっとした立証ばかり。逃げているし、ごまかそうとしている」と批判。袴田さんの姉ひで子さん(91)は「今日は(検察の主張・立証を)長々とうかがったが、(公判の最後に弁護団が)ズバッと反論した。大変小気味よかった」と振り返った。

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