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袴田さん差し戻し審 着衣血痕「赤みが残ることはない」 みそ漬け鑑定、法医学者証言

 旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、弁護側鑑定を手掛けた法医学者2人の証人尋問が22日、東京高裁で非公開であり、終了後に弁護団が記者会見して内容を説明した。2人が「1年もみそに漬かれば血痕に赤みが残ることはない」と証言したと明らかにした。

非公開で行われた証人尋問について内容を説明する弁護団と袴田ひで子さん(右から2人目)=22日午後、東京都内
非公開で行われた証人尋問について内容を説明する弁護団と袴田ひで子さん(右から2人目)=22日午後、東京都内

 弁護団は、2人の所属と氏名について旭川医科大法医学講座の清水恵子教授と奥田勝博講師と公表した。
 事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクから発見された「犯行着衣」に付着した血痕には赤みが残り、弁護団は不自然だとして捏造(ねつぞう)証拠だと訴えている。審理を高裁に差し戻した2020年の最高裁決定は「みそ漬けされた血液の色調変化に影響を及ぼす要因」について、専門的知見を踏まえて審理を尽くすよう求めていた。
 弁護団は差し戻し審で、みそ漬けされた血痕の赤みが失われるメカニズムを化学的に示した清水教授と奥田講師の鑑定書を新証拠として提出した。弁護団によると、尋問で2人は、血液がみそに漬かるとヘモグロビンの変性や分解などで赤みが消え、数カ月以内に黒褐色化することを改めて解説。みそ漬け血痕の色の変化を調べるために東京高検が行っている「みそ漬け実験」については、みその発酵が進みにくい真空パックや脱酸素剤が使われている点などを挙げて「普通のみそ造りの条件とあまりにもかけ離れていて意味がない実験」と指摘したという。
 弁護団の間光洋弁護士は記者会見で「まさに最高裁決定が“宿題”として求めた専門的知見を、きちんと立証できた。(黒褐色化する)メカニズムそのものについては検察官はほとんど質問せず、メカニズムはほぼ争いがない状況と受け止めている」と手応えを述べた。
 8月1日には弁護団の主張に否定的な高検請求の法医学者2人を、同5日には弁護団請求の物理化学者1人を証人として尋問する。

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