テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

無実の人を救済しやすく 30年ぶり 日弁連が再審法改正案

 日本弁護士連合会(小林元治会長)は22日、規定が乏しいと指摘されて久しい再審法(刑事訴訟法の第4編再審)の速やかな改正を求める意見書を約30年ぶりにまとめ、公表した。証拠開示に関する具体的な手続きを盛り込み、再審開始決定に対する検察官の不服申し立てを禁止するなど、無実の人の救済という再審制度の目的が実現しやすくなるように規定を充実させた改正案を提示している。

再審法の改正意見書を説明する日弁連再審法改正実現本部の鴨志田祐美本部長代行(左)ら=22日午後、東京都内
再審法の改正意見書を説明する日弁連再審法改正実現本部の鴨志田祐美本部長代行(左)ら=22日午後、東京都内

 裁判員裁判の導入に伴って通常審では証拠開示制度が整えられてきたが、再審請求審は未整備のまま先送りされてきた。検察官が裁判所に提出してこなかった再審の請求人側に有利な証拠が開示された結果、再審開始や再審無罪の大きな原動力となった事例が相次ぐ一方、法の規定がないため開示されるかどうかは担当裁判官の訴訟指揮や検察官の姿勢次第で「格差」が生じているとの批判がある。意見書は、請求人側の求めに応じて裁判所が検察官に証拠一覧表の提出や証拠開示を命じる規定を設けた。
 「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の鉄則は再審請求審にも適用されるとした最高裁の「白鳥決定」(1975年)などの趣旨を明文化するため、再審開始要件の「無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとき」の「明らかな証拠」を「事実の誤認があると疑うに足りる証拠」に緩和したほか、重大な憲法違反を理由とした再審開始も提案した。請求権者の拡大や国選弁護人制度の新設のほか、証人尋問など重要な手続きは公開の法廷で行うことも求めた。
 意見書は、法務大臣と衆参両院の議長に加え、与野党の各党にも送付した。

再審可否機に世論喚起
 「再審制度の不備を体現する事件の(再審可否)決定が相次いで出るタイミングで意見書を発出できることは意味がある」。日弁連の再審法改正実現本部で本部長代行を務める鴨志田祐美弁護士は22日、再審法改正意見書の概要を伝えた記者会見でそう強調した。
 滋賀県日野町で酒店経営の女性が殺害され、手提げ金庫が奪われた「日野町事件」で、強盗殺人罪で無期懲役が確定し服役中に病死した元受刑者について、大阪高裁が27日、再審開始の可否判断を示す。3月13日には、死刑が確定した袴田巌さん(86)の再審可否を東京高裁が決定する。ともに再審開始決定に対して検察官が即時抗告したことで再審請求審が長引いている点などが共通している。
 鴨志田弁護士は「冤罪(えんざい)は誰の身にも起こりうる。わが事として考えてもらいたい」と呼びかけ、世論や国会議員の関心を高めることで「ぜひとも早く法改正が実現してほしい」と期待を込めた。

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