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「早く無罪に」決意新た 弁護団、抗告断念にうれし涙 袴田さん再審確定【動画あり】

 当然の判断だと分かってはいても目にはうれし涙が浮かんだ。一家4人を殺害したとして死刑が確定し、無実を訴えて裁判のやり直し(再審)を求めてきた袴田巌さん(87)の再審開始が20日、検察の特別抗告断念によって確実になった。弁護団は都内で記者会見を開き、二人三脚で取り組んできた支援者に感謝。「袴田さんを早く無罪にしてあげたい」と決意を述べた。事件から半世紀余り。姉のひで子さん(90)は満面の笑顔を見せた。

特別抗告断念を受けて笑顔を見せる袴田ひで子さん=20日午後、浜松市内
特別抗告断念を受けて笑顔を見せる袴田ひで子さん=20日午後、浜松市内
記者会見で涙を浮かべながら検察の特別抗告断念を報告する弁護団の小川秀世事務局長(右)と西嶋勝彦団長=20日午後、都内
記者会見で涙を浮かべながら検察の特別抗告断念を報告する弁護団の小川秀世事務局長(右)と西嶋勝彦団長=20日午後、都内
特別抗告断念を受けて笑顔を見せる袴田ひで子さん=20日午後、浜松市内
記者会見で涙を浮かべながら検察の特別抗告断念を報告する弁護団の小川秀世事務局長(右)と西嶋勝彦団長=20日午後、都内

 特別抗告期限を踏まえ、会見は午後4時半に設定されていた。検察の断念が弁護団に伝わったのは、そのわずか1分前。小川秀世事務局長の携帯電話に担当検察官から連絡が入った。
 「特別抗告を断念するのか」「そうです」―。通話しながら小川さんの目は涙でにじみ、赤くなった。
 13日の東京高裁決定は、検察の主張をことごとく退けていた。刑事訴訟法によると、特別抗告の理由は憲法違反か判例違反に限られる。西嶋勝彦団長は「特別抗告の理由はなく、いくらあがいても恥になるだけだった。世論の動向を見ながら(抗告断念を)判断したのだろう」と推測した。
 西嶋さんは、1989年に静岡地裁で再審無罪となった「島田事件」の弁護団員でもあった。経験が豊富な西嶋さんにして、涙で言葉が詰まった。これまでを振り返り、袴田さんの再審開始を認めて釈放した2014年の静岡地裁の決定に対し「検察官が即時抗告したことがそもそもの誤りだった。巌さん、ひで子さんにとって、無用の苦痛だったと思う」と口にした。
 日本の再審制度は、再審請求審と再審公判の2段階構造。再審の可否を判断する請求審が主戦場となり、なかなか再審公判にたどり着けない現実がある。西嶋さんは「請求審で証拠は出尽くしている。検察官が再審公判で改めて主張・立証する必要はない。無罪論告をさせるよう、引き続き力で押していかなくてはいけない」と冷静に語った。

「特別抗告の要件なし」 東京高検 高裁決定に不服も
 袴田巌さんの再審開始を認めた東京高裁決定について、東京高検の山元裕史次席検事は20日の記者会見で、刑事訴訟法の規定に照らし「特別抗告の申し立て事由があるとの判断に至らなかった」と断念の理由を述べた。同決定には「承服しがたい点がある」と強調したが、詳細は明らかにしなかった。
 刑事訴訟法では特別抗告の要件を憲法違反や判例違反がある場合と定めている。山元氏は最高検の意見も聴きながら「法と証拠に基づいて慎重に検討を重ねた」と断念に至る経緯を説明した。
 同決定は犯行着衣とされた衣類を捜査機関が捏造(ねつぞう)した可能性を指摘した。山元氏は承服しがたいとした具体的な内容を問われると、「決定の特定の点を取り上げたわけではない」としつつ、今後開始される再審公判を見据え、「詳細な回答は控えたい」と言及を避けた。
 再審公判で有罪立証するかについては「静岡地検と東京高検で適切に対応したい」と述べるにとどめた。

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