テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

社説(1月21日)再審法改正 県内国会議員が先頭に

 えん罪を訴える人の刑事裁判のやり直し(再審)手続きに長い年月を要する現状を改めるため、日本弁護士連合会(日弁連)が求めている刑事訴訟法の再審規定(再審法)の改正は、国会議員の多くが賛同しなければ実現しない。しかし、静岡新聞社が全国会議員を対象にしたアンケートの低い回答率をみる限り、不備が指摘される再審制度への問題意識は議員間で広がっていないのは明らかだ。
 アンケートは現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審開始も踏まえて実施した。回答者は国会議員711人のうち187人で、回答率は26・3%。法改正の鍵を握る与党の自民は2・9%、公明は15・3%にとどまった。回答者のほとんどが法の不備と法改正の必要性を認めている。無回答者は問題意識が低い、関心がないと思われても仕方がない。
 ただ、静岡県内に地盤がある議員については18人のうち11人が回答を寄せた。県内で起きた事件の再審が地元の裁判所で進行中ということもあって県外議員と比べて関心はかなり高いといえる。政党の壁を超えて県内議員が再審法改正の先頭に立ってほしい。
 袴田さんの再審無罪を勝ち取るため、2010年に超党派の議員で結成した袴田巌死刑囚救援議員連盟の会長は自民の塩谷立元文部科学相(衆院比例東海)が務める。過去の元死刑囚の再審と同じように袴田さんにも無罪判決が言い渡される公算が大きい。ただ、無罪となっても議員連盟の役割が終わったと考えてもらいたくない。議員連盟が核となって再審法改正に向けたプロジェクトチームを立ち上げたらどうか。
 日弁連は再審法の規定が乏しく、具体的なルールがないため、裁判官の姿勢によって事件ごと再審手続きの進展に「格差」が生じていると指摘する。その上で、えん罪を晴らすための証拠開示の制度化や、再審手続きの長期化につながる検察官の不服申し立て(抗告)の禁止といった法改正を要求している。
 再審法は国民にとっては身近な法律ではない。選挙での得票に結びつかないと考える議員もいるだろう。だが、国家権力による最大の人権侵害であるえん罪を防ぐための重要な法である。自公以外の回答率は61・4%に上った。与党の県内議員や議員連盟のメンバーが党内で法改正の理解者を増やすように努めてもらいたい。
 国会議員は地方の声も無視できない。北海道議会、岩手、山梨、三重の各県議会は国に再審法改正を求める意見書を採択している。静岡県議会も後に続いてほしい。

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