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袴田さん再審開始 20日抗告期限 抗告要件は憲法違反か判例違反

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の裁判のやり直し(再審)を認めた東京高裁決定は20日、最高裁への特別抗告期限を迎えた。東京高検が同日中に抗告すると、再審開始の可否を巡る審理はさらに長引く。一方、抗告を断念した場合は静岡地裁で再審公判に移り、袴田さんは無罪となる公算が大きい。

袴田巌さん
袴田巌さん

 事件では、発生から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで血痕の赤みが見て取れるシャツなど「5点の衣類」が見つかった。確定判決は袴田さんの犯行着衣と認定したが、弁護団は赤みが残っているのは不自然として捏造(ねつぞう)された証拠だと訴えてきた。
 13日の東京高裁決定は、みそ漬け血痕の赤みが失われるメカニズムを化学的に明らかにした弁護団側鑑定書の信用性を認めた。新旧の証拠を総合評価し、袴田さんを犯人とした確定判決の認定に「合理的な疑いが生じることは明らか」と指摘。みそ漬け血痕が短期間で黒色化することを示した実験報告書などの新証拠を「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する」として再審開始を認めた2014年の静岡地裁決定を支持し、検察の即時抗告を棄却した。5点の衣類については、事実上捜査機関によって捏造された可能性が「極めて高い」と踏み込んだ。
 刑事訴訟法は、特別抗告の要件を憲法違反か判例違反がある場合としている。弁護団や支援者に加え、刑事法の研究者らからも検察に特別抗告を断念するよう求める声が強まっている。

 袴田事件 現在の静岡市清水区で1966年6月30日未明、みそ製造会社の専務=当時(41)=方から出火し、ほぼ全焼した。焼け跡から専務一家4人の遺体が見つかり、県警は同8月、強盗殺人容疑などで住み込み従業員の袴田巌さんを逮捕した。袴田さんは勾留期限の間際に「自白」したが、同11月の初公判で否認し、以降は無実を訴えた。80年に死刑判決が確定。袴田さんの姉ひで子さんが2008年4月に第2次再審請求を申し立て、静岡地裁は14年3月、再審開始を認めると同時に死刑と拘置の執行停止を決め、袴田さんを釈放した。東京高裁は18年6月、再審請求を棄却したが、釈放は維持。最高裁は20年12月、みそ漬け血痕の変色について審理不尽の違法があるとして高裁決定を取り消し、審理を差し戻した。

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