テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

袴田さん、元裁判長と初対面 14年に再審開始や拘置執行停止決定 姉感謝「命助けてくれた」

 現在の静岡市清水区で1966年に一家4人を殺害したとして死刑が確定し、裁判のやり直しが認められた元プロボクサー袴田巌さん(87)が19日、静岡地裁の裁判長として袴田さんの再審開始と死刑・拘置の執行停止を決めた村山浩昭さん(66)と都内の集会会場で初めて対面した。袴田さんの姉ひで子さん(90)は「命を助けてくれたようなもの。ありがとう」と村山さんに直接感謝を伝えた。

初めて対面した袴田巌さん(中央)と元裁判官の村山浩昭さん(右)。左はひで子さん=19日、都内(袴田さん支援クラブ提供)
初めて対面した袴田巌さん(中央)と元裁判官の村山浩昭さん(右)。左はひで子さん=19日、都内(袴田さん支援クラブ提供)

 村山さんは2014年、袴田さんの再審開始と死刑の執行停止に加えて「耐えがたいほど正義に反する」として拘置の執行停止も決め、袴田さんは約48年ぶりに釈放された。13年には手続きの一環で意見を聴くため収監先の東京拘置所に出向いたが、袴田さんが「どうしたって死刑になる」と拒否。面会できなかった。
 集会は、再審法改正をめざす市民の会が参議院議員会館で開催。村山さんは対談で、拘置所への訪問を振り返り「(袴田さんは)精神的に限界に来ていた」と指摘。健康状態の悪化に加え、重要証拠の「5点の衣類」を捜査機関が捏造(ねつぞう)した疑いが濃いことなどを踏まえ「後で批判を受けようとも私たちは釈放するしかないという結論になった」と述べ、前例なき判断の背景を明かした。
 袴田さんの再審請求審を担当したことで、規定の乏しい再審法の問題について真剣に考え始めたという。「私も含め改正についての研究を怠っていたと思う。改正のための努力も不十分だった。今こそ変えなくてはいけない」と強調した。
 袴田さんとひで子さんは集会に先立ち、村山さんと別室で数分程度対面した。村山さんは報道陣の取材に「とにかくお二人がお元気なうちに無罪になってほしい」と願い、ひで子さんから「命の恩人」と伝えられたことについては「とんでもない。命の危機にさらしたのは捜査機関であり検察であり、裁判所」とした。
 袴田さんの再審開始は、検察の不服申し立てなどを経て23年3月に確定した。

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