テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

「5点の衣類」発見経過や損傷…血痕問題以外からも「捏造疑い」 袴田さん弁護団 再審第6回公判

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(87)の再審第6回公判が16日、静岡地裁(国井恒志裁判長)で開かれた。事件から1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかったズボンやシャツなど「5点の衣類」について、袴田さんの犯行着衣だとする検察側に弁護団が反論。最大の争点とされる衣類に付着した血痕の色を巡る問題を抜きにしても、犯行着衣とするには「合理的な疑い」が生じ、捜査機関による捏造(ねつぞう)の疑いが浮かび上がると訴えた。

急逝した西嶋勝彦弁護団長の写真を手に静岡地裁の再審公判に向かう袴田巌さんの姉ひで子さん(前列右から2人目)=16日午前10時半ごろ、静岡市葵区
急逝した西嶋勝彦弁護団長の写真を手に静岡地裁の再審公判に向かう袴田巌さんの姉ひで子さん(前列右から2人目)=16日午前10時半ごろ、静岡市葵区

 また、遺体の写真を分析し直した結果、被害者は縄などで縛られ身動きが取れない状態で犯人に刃物で刺されたとの新たな主張を展開。刺し傷が目立つ一方、浅い傷が多いことを踏まえて、複数人による強い恨みの犯行と改めて指摘した。
 5点の衣類は67年8月31日に見つかり、県警は9月12日に袴田さんの実家を捜索した。その際、ズボンの共布が「発見」された。確定判決は共布について、衣類と袴田さんをつなげる決定的な証拠と位置づけた。
 弁護団は再審公判の冒頭陳述で、共布の発見経過の不自然さを列挙した。ズボンと共布の切断面が一致すると鑑定されたのは捜索から3カ月後だったと強調。「一目見ただけで、みそ漬けのズボンから切り取られた共布だと判断できるわけがない」とし、捜索は合法的に実家に上がり込むための偽装だったと批判した。実家にあったのは袴田さんが一家の葬儀で使った喪章であり、捜索時に警察官によって共布とすり替えられたと推認されると訴えた。
 袴田さんのすねには傷があったが、逮捕当日の身体検査で記載されておらず、違法な取り調べで負った傷だと言及。「専務と格闘して蹴られた」と袴田さんに虚偽の自白をさせ、自白に合うようズボンの損傷が作り出されたと疑問視した。
 袴田さんの再審開始を認めた2014年の静岡地裁決定は、5点の衣類のほか共布も捏造された疑いがあると判断した。検察側の即時抗告を棄却した23年の東京高裁決定は、すねの傷は逮捕後に生じたとして、ズボンの損傷は「すねの傷に合わせて作出された疑いを生じさせる」としている。

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