テーマ : 袴田さん「再審」 最後の砦

袴田さん再審初公判 42年、費やした時間とエネルギー 日弁連「実現の過程にも思いを」刑事司法の正念場強調

 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した元プロボクサー袴田巌さん(87)の再審公判が27日、静岡地裁で始まった。再審を初めて申し立ててから42年が過ぎ、ようやくたどり着いた舞台。再審支援に取り組む関係者は「公判だけに注目するのではなく、再審が実現するまでにどれほどの時間とエネルギーが費やされたのか、プロセスにも思いを致すべき」と強調する。

事件から1年2カ月後に見つかった「5点の衣類」のうちの白半袖シャツ。衣類が袴田さんの犯行着衣かどうかが、再審公判でも大きな争点となる(弁護団提供)
事件から1年2カ月後に見つかった「5点の衣類」のうちの白半袖シャツ。衣類が袴田さんの犯行着衣かどうかが、再審公判でも大きな争点となる(弁護団提供)
袴田さんの再審公判の主な論点
袴田さんの再審公判の主な論点
「袴田事件」の主な経過
「袴田事件」の主な経過
事件から1年2カ月後に見つかった「5点の衣類」のうちの白半袖シャツ。衣類が袴田さんの犯行着衣かどうかが、再審公判でも大きな争点となる(弁護団提供)
袴田さんの再審公判の主な論点
「袴田事件」の主な経過


論点三つ
 再審公判は当面、犯人がみそ会社の関係者と推認され、犯人の行動を袴田さんが取ることができたか▽事件から約1年2カ月後に現場近くのみそタンクで見つかった「5点の衣類」が袴田さんの犯行着衣かどうか▽袴田さんを犯人とする他の事情があるかどうか-の大きく三つの論点に沿って審理が進められる予定だ。
 5点の衣類は、付着した血痕に赤みが見て取れた。袴田さんの再審開始を認めた今年3月の東京高裁決定は、長期間みそ漬けされた血痕の赤みが失われるメカニズムを化学的に示した弁護団の鑑定書を重視。5点の衣類が1年以上みそ漬けされたことに「合理的な疑いが生じた」と評価した上で、捜査機関によって捏造(ねつぞう)された可能性が極めて高いと指摘した。
 再審公判で、検察側は組織を挙げて有罪立証に注力する姿勢を見せてきた。地裁は当初、年度内に結審する意向を明らかにしたとされるが、証拠調べにかかる時間が見込みより膨らみ、来年度にずれ込むことが確実視される。弁護団は「検察が好きなように立証することを裁判所が許容している」と批判。一方で「控訴させないためにも、十分に立証する機会を与えているのでは」との見方も示す。
 
問うもの
 死刑囚の再審は、1989年に静岡地裁で無罪判決が宣告された「島田事件」以来5例目。島田事件を含め、先の4例全てが無罪に至った80年代、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める声はあったが、結果として手つかずのまま放置されてきた。日本弁護士連合会の再審法改正実現本部で本部長代行を務める鴨志田祐美弁護士は「今度こそ、制度改革につなげていかなくてはいけない」と訴える。「この国の刑事司法をどうするかの正念場。法曹も市民も、そういう目で注視を」と力を込めた。
 (社会部・佐藤章弘)

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