袴田弁護団 新たな知見、高裁に提出へ みそ漬け血痕の赤み否定
旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(85)の第2次再審請求審で、みそタンクから発見された「犯行着衣」の血痕の色を巡り、長期間、みそに漬かると血痕の赤みは残らないとする新たな化学的知見を、弁護団が専門家から得たことが25日までに、複数の関係者への取材で分かった。
専門的知見を踏まえて審理を尽くすよう求めた最高裁の意向に応えた形で、東京高裁で続く差し戻し審への影響が注目される。弁護団は近く、知見に基づく意見書などを高裁に提出する方針。関係者は「最高裁の宿題に対する答えが出た。再審開始に向けた決定打になり得る」との見方を示した。
弁護団はこれまで、みそ漬けされた着衣の血痕について、みその中の糖と血液中のタンパク質の接触で生じる化学反応「メイラード反応」によって血痕が黒褐色に変色するなどと主張してきた。最高裁は昨年12月、高裁への審理の差し戻し決定で、同反応を含め、血痕の色調変化に影響を及ぼす要因について、専門的知見に基づく検討を行うよう求めていた。
複数の関係者によると、弁護団は最高裁決定を受け、血痕の変色や要因に関して専門家に検討を依頼した。専門家の検討の結果、長期間、みそに漬かると、ヘモグロビンの変性などで黒褐色化が進み、赤みが残らないメカニズムが判明したという。
犯行着衣とされる半袖シャツなど「5点の衣類」は事件から1年2カ月以後に現場のみそタンクで見つかり、付着した血痕に赤みが残っていた。弁護団は「みそ漬け実験」を繰り返し、どのような条件下でも「2週間以内には血痕は黒くなる」と指摘。発見直前に捏造(ねつぞう)された証拠だと訴え、衣類の血痕に赤みが残り得るかどうかが差し戻し審の焦点となっている。
袴田さんは2014年に静岡地裁で再審開始と死刑・拘置の執行停止決定を受け、約48年ぶりに釈放された。検察側が即時抗告し、18年に東京高裁が再審開始を取り消した。弁護団が特別抗告し、最高裁は20年12月に審理を高裁に差し戻した。