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東海道新幹線 停車1.5倍試算 「地域活性化」「来訪者増」 静岡県内沿線の首長 歓迎と期待

 国土交通省がリニア中央新幹線の開業後、東海道新幹線の静岡県内駅への停車回数を増やせるとの試算を公表した20日、沿線自治体の首長らは「利便性向上や来訪者増につながる」と一様に歓迎し、交流人口拡大や経済効果に期待感を示した。ただ、リニアの県内工区を巡っては水問題や生態系への影響に関する議論が続き、着工のめどは立っていない。首長からは課題を解決した上で事業を進めるよう求める声も上がった。

東海道新幹線の利便性向上のイメージ
東海道新幹線の利便性向上のイメージ

水問題、環境影響議論 進展望む声  浜松市の中野祐介市長は浜松駅の停車本数が1日49本から74本に増加するとの試算を踏まえ、「交流人口拡大につながる可能性がある」と指摘。リニア長野県駅との道路ネットワーク強化で「地域の一層の活性化が期待できる」とした。
 静岡市の難波喬司市長は「本市にも大きな経済効果をもたらす可能性がある」と歓迎した。リニア工事の環境影響評価について市の協議会で議論を進めていることに触れ、「JRによる環境影響評価が適切かつ迅速に行われるよう市としても努めていく」と述べた。
 新幹線駅がある県東部の市長も試算を前向きに捉え、「首都圏発の旅行者や成田・羽田空港からのインバウンド(訪日客)の利便性向上により、伊豆地域全体の回遊性向上が期待できる」(斉藤栄熱海市長)、「国内外から多くの人を呼び込むことを後押しする」(小長井義正富士市長)、「水や生態系の問題をいち早く解決してリニアを開通させ、新幹線の停車本数が増えることを地域全体が願っている」(豊岡武士三島市長)と受け止めた。
 より詳細な試算を求める声も。島田市の染谷絹代市長は「ひかりの停車本数が1時間に2本になるなど、具体的な調査結果を示してほしかった。県中部が首都圏の通勤通学圏内となり、企業誘致が進み、県民が具体的に経済効果を思い描けるようになる」との認識を示した。掛川市の久保田崇市長は「名古屋駅開業後についても目に見える増便効果が出てほしい」と話し、JR東海に対しては「ひかりの掛川駅停車についても検討を」と求めた。
 牧之原市の杉本基久雄市長は試算は本来、JR東海が工事認可時に示すべきだったとし、「順番を間違えなければリニア問題がここまで混迷することはなかった」と苦言を呈した。静岡空港の新駅構想については「建設促進期成同盟会で建設的な検討がなされることを期待する」と強調した。
川勝知事「実現可能性聞きたい」  川勝平太知事は20日、国土交通省が示したリニア中央新幹線開業後の東海道新幹線の需要予測について、仮定に基づいた調査結果だとして「国交省から直接説明する機会を持ちたいとうかがっており、今後、実現可能性などをしっかりと聞きたい」とコメントした。
 県内各駅の停車本数が増加する方向性が示されたとして歓迎する一方、「具体的な停車本数は示されていない」とも指摘した。
 国に対しては「引き続きリニアの整備と大井川の水資源および南アルプス保全との両立に向けた一層の支援とともに、増加する停車本数を含め、JR東海への的確な指導を行っていただくようお願いしたい」と求めた。
JR東海「ダイヤ検討 参考に」  JR東海は20日、東海道新幹線の停車増に関する国の調査結果を受け、「リニア中央新幹線のメリットを静岡県の皆さまに実感していただくことが大切と考えている。今回の調査結果も参考に、将来に向けて便利なダイヤを検討していきたい」とコメントした。
「JRや行政と連携」 静岡商議所会頭  静岡商工会議所の岸田裕之会頭は20日、リニア中央新幹線の整備に伴い県内の駅に停車する東海道新幹線の増加を見込んだ国土交通省の調査結果を歓迎し、「地元経済界として経済波及効果を最大限生かせるよう、JRや行政と綿密に連携を取っていきたい」とコメントした。

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