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富士のダウン症モデル パリコレへ 19歳の菜桜さん 「みんなを笑顔に」 母娘で夢見たランウエー

 ダウン症のあるモデルとして活躍する菜桜(本名・斉藤菜桜)さん(19)=富士市=がフランスで26日開幕したパリ・コレクションに3月2日、ゲスト出演する。日本文化を伝えようと、着物を生かした豪華なドレスで登場する。海外のファッションショーのランウエーを歩きたい-。母娘で描いた夢の舞台に立つ瞬間が近づいている。

パリ・コレクションでのドレスを着た菜桜さん(母親の由美さん提供)
パリ・コレクションでのドレスを着た菜桜さん(母親の由美さん提供)

 柔らかな笑顔やカメラをまっすぐに見つめる瞳が魅力の菜桜さんは、ファッションイベント「東京ガールズコレクション」の関連企画など国内のショーへの出演を重ねてきた。母親の由美さん(53)とともにインスタグラムでも積極的に発信している。
 菜桜さんはダウン症の合併症で心臓や食道に疾患があり、40回以上の手術を経験してきた。現在は障害者が通う就労継続支援事業所に行きながらモデルをしている。
 ダウン症は筋力が弱く、まっすぐな姿勢を保ち歩くことが難しい面がある。本格的な活動を始めて5年。日々、ウオーキングレッスンや自宅の廊下での練習を重ねてきた。
 重度の知的障害もあり新しいことを習得するのは時間がかかるというが「数%ずつ成長してきた」(由美さん)。厳しい練習に泣き出し、辞めようと声をかけたときもあるが、菜桜さんは「やる!」と譲らなかった。
 チャンスが舞い込んだのは今年1月。音楽を通じた持続可能な開発目標(SDGs)を推進する団体「Music for(ミュージック フォー) SDGs」の代表大久保亮さん(59)=日本生命主席国際調査部長=を通じ、デザイナーのサミーナ・ムガールさんのショーに出演できるとの連絡があった。菜桜さんは「やったー」と跳びはねて喜んだという。大久保さんは「障害のある子のパワーを世界に知らせたい」と話す。
 衣装は貸衣装店「みやび」(北九州市)の店主の池田雅さん(52)が制作した。池田さんは和装デザイナーでもあり、同市の成人式で話題となる「ど派手」な衣装を手がけている。
 菜桜さんの印象から「フランス人形とおひなさまの融合」をイメージ。さらに「ど派手でなければ私がやる意味がない」と赤の反物と金の帯を使い、襟元は針金を入れて動きを出した豪華絢爛(けんらん)なドレスに仕立てた。現地でも着付けにあたる池田さんは「120%の出来。楽しく歩いてきてほしい」と期待する。
 3月2日の出演が迫り、練習や渡航準備で慌ただしい日々を送っている。菜桜さんは「わくわくする。みんなを笑顔にしたい」と心待ちにする。由美さんは「2人ではかなえられない夢が、たくさんの方に支えられ実現した。障害のある、ないにかかわらず、夢を持つ人にエールを送れたら」と意気込んだ。

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