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富士医療圏の630問題 救急搬送の課題 整理を【東部 記者コラム 湧水】

 患者のもとに救急隊が駆けつけた時、受け入れ病院の照会に6回以上、または搬送先の決定までに30分以上かかる「630問題」。この事案は医師数が“西高東低”といわれる県内でも富士・富士宮の富士医療圏が突出しているという。県のまとめによると県全体の4割を超えていて、解決に向けた取り組みが急がれる。
 富士市議会の有志が地域医療研究会を立ち上げた。630問題をはじめ、医師や看護師の不足、働き方問題などについて、市医師会と意見を交わしている。活動は当面1年間と時限的で、市や県への有用な提言へとつながる成果を目指している。
 「630と数字で表しても実感がない」との関係者の声を受け、市消防本部は救急現場を再現する動画を制作した。検査ができない、対応できる医師がいないなど病院側が抱える事情はさまざま。断られ続けて市外へと搬送される筋立ては、これが現実だと思うと切実だ。
 主な原因には、救急患者を受け入れられる病院が少ないことが挙げられる。入院を伴う2次救急への対応の多くは市立中央病院に依存している。救急の専門医が限られることも受け入れ体制の構築を難しくしている。
 人口10万人あたりの富士市の医師の数は、静岡市の6割程度にとどまる。課題解決に向けた医師の確保には医大との連携強化が欠かせず、研修医の派遣には指導医や機器の充実など教育環境の整備が重要だ。地元の出身者に働きかけるほか、医療を志す学生を輩出するため高校生にもアプローチするなど尽くすべき手はある。
 「これらは急に出てきた問題ではない」との指摘は事態の普遍性を突く。同じ状況から脱却した市町の事例にヒントがあるはずだ。圏域の限られた病床が有効に生かされるよう、県と市、病院、医師会の課題を整理して解決へと導きたい。
 富士市は市立中央病院の老朽化に伴う新病院建設の方向性が決まる過程にあって、市民の関心が高まる機会でもある。研究会は議論の行程や取り組みを市民と共有し、難題に直面している実情を丁寧に発信することが求められる。
 (富士支局・宮城徹)

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