文化生活部 宮城徹
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ピアノインスト ADAM atが10周年 新感覚のサウンド
ピアノインストゥルメンタルのトップランナーADAM at(浜松市)が、活動10周年を記念するアルバム「OUTLAST」をリリースした。新感覚のサウンドが勢いを増す全10曲は、大物ゲストを迎えるなど新型コロナウイルス禍にも挑戦が詰まる。 英国を代表するロックバンドFEEDERのボーカリスト、グラント・ニコラスが参加した「Happy Place」は、共作の希望を率直に伝えて実現した。未来の見えづらいコロナ禍で「作りたい物は作っておく、という思いからダメ元で持ちかけた。心が落ち着く場所の大切さを訴える歌詞を付けてもらい、今こそ聴いてほしい曲になった」。 「22時」は初めての作詞。飲んだ後に帰る
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2年目の演劇アカデミー 劇場だからできること【黒潮】
静岡県舞台芸術センター(SPAC)が高校生を指導する演劇アカデミーの2期生15人の活動がスタートした。世界で活躍する演劇人の育成を目指す県の事業。年度末まで、放課後や週末に週3回というスケジュールはハードだが、募集に意欲を見せた10代にとってまたとない経験になることは確かだろう。 校長を務める宮城聰芸術総監督は「いろいろな人がいる場所で、まずは全然知らなかった物事に興味を持ってもらえたら」とアウトプットを急がせないスタンス。劇場で得られる物の見方や考え方をいつか演劇に役立てて、との期待を込める。 学校の部活動をはじめ、演劇を教育に取り入れる場は以前からある。SPACでは県内の中高生を学校
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身近な素材、膨らむ空想 田中達也ミニチュアライフ展2
静岡市清水区の清水文化会館マリナートで開かれているミニチュア写真家田中達也さん(40)=鹿児島県=の個展「ミニチュアライフ展2」。日用品や食品を風景の一部に見立てた作品は、見る人を物語のワンシーンのような情景へと誘う。本展では代表的な立体作品と写真計170点を展示する。会場を訪ねた田中さんに、遊び心が詰まった創作について語ってもらった。 見立て写真をインスタグラムで毎日発表するようになって12年目、作品は4500点近くになりました。日めくりカレンダーのように新作を見てもらうことは創作のモチベーションになっています。 もともとミニチュア人形を集めていて、共感を得られる写真を撮りたくて見立て
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身軽に一途に客席と共演 一人芝居、演劇人の挑戦【NEXTラボ】
俳優・演出家 佐藤剛史さん(静岡市) 体一つでドラマを立ち上げる「一人芝居」は、細部まで行き届いた所作やせりふが見る人の想像力を刺激する。コロナ禍によって稽古や公演が制約を受ける中、機動力と柔軟性を備えたスタイルは活動継続の足場にもなっている。客席の視線を一身に浴びる演劇人の挑戦をのぞいてみた。 「町民の皆さんの意見を聞く場でございます!」。右へ左へ視線を送るジャンパーの中年男が大きくうなずき、謝り、開き直る。静岡市葵区の小劇場「人宿町やどりぎ座」で行われた一人芝居の公演。スポットライトを浴びる俳優佐藤剛史さん(58)=同区=に、観客がじっと見入る。 この日の上演は15分ほどの短編を
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マスダカルシさん 藤枝で個展 新聞で切り絵「記念日」表現
藤枝市の新聞切り絵作家マスダカルシさんの個展「きねんび」が12日まで、同市のギャラリーヒュッゲで開かれている。 新聞のカラー写真や色鮮やかな広告の部分を切り貼りして作った計43点。「シーサーの日」「よい夫婦の日」などさまざまな記念日をテーマに毎日作成しているというシリーズを中心に展示した。 「子ども読書の日」は、動物たちが思い思いの本を持ち寄る姿を表現。「国立公園指定記念日」は、公園で缶蹴りに集まる鳥たちを愛らしく仕上げている。マスダさんは「毎日が何かの記念日ということに発見がある。作品を通じて、一日一日を特別な日として楽しんでもらえたらうれしい」と話す。 マスダさんは本紙日曜版「YO
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人魚姫の恋またいつか 「リトルマーメイド」静岡公演千秋楽
劇団四季のミュージカル「リトルマーメイド」の静岡ロングラン公演(静岡市、静岡商工会議所、市文化振興財団、劇団四季、静岡新聞社・静岡放送主催、県共催)が29日、同市葵区の市民文化会館で千秋楽を迎えた。 同作初となった県内公演の来場者数は、計54回の上演で約9万6千人。劇団四季による過去8回の静岡ロングラン公演のうち、2003年の「キャッツ」に次ぐ2番目の動員数となった。 終演後のカーテンコールでは、王子役の俳優が「またいつか、ここ静岡で皆さまにお会いできる日を楽しみにしております」と感謝の言葉を述べた。ステージに勢ぞろいした俳優が笑顔で手を振り、満席の約2千人が総立ちで拍手を送り続けた。
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異次元の世界、客席と共有 劇団四季リトルマーメイド出演 荒川務
劇団四季のミュージカル「リトルマーメイド」静岡公演(静岡新聞社・静岡放送など主催)で、カモメのスカットルとして出演中の荒川務。「ファンタジーという異次元の世界を客席と共有できる作品。互いにいいエネルギーを交換することで作品が生き生きとする」と話す。 地上の世界に憧れ、しばしば海の上をのぞきにくる人魚姫アリエル。そこへ現れるのが物知りふうのスカットルだ。「何にでも興味を持つアリエルに、大学教授のように熱心に教える。知ったかぶりの説明も多いけど、そこがまた憎めない」。明るく楽観的なキャラクターに愛着を持つ。 水中のシーンで宙に浮くアリエルと同じように、俳優を宙につり上げる装置で空を飛び回る役
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藤枝題材の浮世絵 早稲田大の石上さん解説 蓮生寺で講座
藤枝市の蓮生寺でこのほど、公開講座「考える浮世絵」が開かれ、同市出身の浮世絵研究者で早稲田大講師の石上阿希さんが藤枝を題材にした作品に基づいて解説した。 石上さんは、江戸時代末期の人気絵師三代歌川豊国による浮世絵「東海道五十三次之内藤枝熊谷直実」を提示。東海道の名所とゆかりの人物を演じる役者を組み合わせたシリーズの特徴や、瀬戸川を描いた藤枝の風景などを説明した。 平家物語に登場する熊谷は、一ノ谷の合戦で平敦盛を討った後、人生の無常を思い出家して蓮生と名乗った。石上さんは、熊谷が後に藤枝で立ち寄った屋敷が蓮生寺であることに触れた上で「絵に描かれている桜にも理由があるなど、浮世絵には読み解き
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ミュージカル制作開始 独自授業「表現」の一環 静岡・清水南高中等部3年生
清水南高中等部(静岡市清水区)の3年生がこのほど、通年で取り組むミュージカルの制作を始めた。全121人がダンスの振りを学びながら、動きや心を一つにする気構えなどを確認した。 体育や音楽、美術などを組み合わせた同校独自の授業「表現」の一環。本年度はミュージカル映画の名作「天使にラブソングを2」の舞台化を目指し、演技やダンスの稽古のほか、舞台美術やスタッフワークなどの準備を進めていく。発表は来年2月の予定。 制作に先立ち、同中等部の全生徒らは静岡市民文化会館で上演されている劇団四季の「リトルマーメイド」を観劇した。学年を代表して監督を務める丸山一葉さんは「全員でトップレベルの作品への感動を共
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夕闇舞台、古代の冒険 SPAC、静岡で野外劇
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の新作演劇「ギルガメシュ叙事詩」の静岡公演が2日、静岡市葵区の駿府城公園特設会場で始まった。満席の観客が夕闇に浮かび上がる幻想的な舞台を堪能した。 古代メソポタミアの文学に基づき、自然破壊を題材にした最古の物語とされるギルガメシュ王の冒険を舞台化した。宮城聰芸術総監督の演出は、光と影を映し出した空間に打楽器の軽快な演奏を響かせた。森を守る怪物は巨大な操り人形で表現するなど迫力の舞台をつくり上げた。 市内で開催中の「ふじのくに→←せかい演劇祭2022」の一環で5日まで計4回上演する。チケットは全てキャンセル待ち。問い合わせはSPACチケ
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未知の文化に出会う祭典 SPAC「せかい演劇祭」静岡で開幕
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに⇆せかい演劇祭2022」が29日、静岡市内で始まった。新型コロナウイルス禍で招待できなかった海外作品を3年ぶりに上演し、劇場は初日から活気に包まれた。5月8日まで。 駿河区の静岡芸術劇場で開幕を飾ったのはブルガリア作品「カリギュラ」。孤独な皇帝が暴君と化す不条理劇は、緊迫感に満ちた演出で観客を圧倒した。 上演後のトークでは、演出家のディアナ・ドブレバさんが、物語に込めた思いや来日に伴う苦労などをユーモアを交えて明かした。ブルガリアのアラバジエバ駐日大使が登壇し、ブルガリアの芸術を取り上げる機会への感謝を述べた。 このほかコロンビア演出家の
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不思議体験、説明は最高難度 豊島監督(浜松出身)が「東大怪談」出版
ドキュメンタリー映画やホラー作品などを手掛けてきた豊島圭介監督(浜松市出身)が、母校の東大を巡る不可思議を集めた著作「東大怪談-東大生が体験した本当に怖い話」(サイゾー)を出版した。恐怖体験を持つ卒業生11人から寄せられた46のエピソード。科学的に説明がつかない現象は映像なしでもゾッとさせられる。 東大病院で謎の音を聞いた男性看護師、牛人間に遭遇した編集者、救世主としての重圧を背負ったシステムエンジニア-。「論理性をまとったエリートたちの告白に、どうしても理屈に収まらない部分がある。説明は極めて難しい」。東大に関心がなくてもいや応なしに引き込まれる。 猟奇的な事件のその後を追う実録番組を
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琉神躍動 沖縄の芸能 拠点静岡で4年ぶり公演へ
沖縄の民俗芸能を舞台芸術として表現するユニット「琉神」が5月7日、静岡市清水区で公演「琉神ライブ ワシタウムイ」を開く。拠点とする静岡での自主公演は4年ぶり。鈴木一行代表は「久々に公演ができる喜びを実感している。皆のコロナ疲れを吹き飛ばすステージを届けたい」と話す。 琉神オリジナルの演目をメインとした公演シリーズ「ワシタウムイ」の名は、「私たちの思い」を意味する沖縄の言葉。エイサーを軸に、沖縄太鼓や三線[さんしん]の演奏、獅子舞のパフォーマンスなどさまざまな芸能を織り交ぜる。棒術や釵[さい]など古武術の演武も取り入れる。 静岡市出身の鈴木代表は沖縄での学生時代、米国人に向けたロックライブ
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山田洋次監督招きトークショー 23日、浜松・シネマイーラ
「男はつらいよ」シリーズの全50作を約2年がかりで上映し、最終回となる23日に山田洋次監督を迎えてトークショーを開くミニシアター「シネマイーラ」(浜松市中区)。イベントを企画した榎本雅之館主は、主人公の寅さんと映画館支援者への感謝を口にする。 渋谷東映(東京都)の映写技師として勤め始めた50年前、同じ建物にあった渋谷松竹で上映された「男はつらいよ」。主演の渥美清さんがいつも一人で訪れ、立ち見で鑑賞していたことを覚えている。松竹作品の映写にも携わり、映写窓を通して見た寅さんは「面白おかしくて、泣けた」。 新型コロナウイルス禍を受け、全国のミニシアターは苦境が続く。シネマイーラは3週間の休業
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孤立解消、舞台に効能 SPAC「せかい演劇祭」、静岡市で29日から
静岡県舞台芸術センター(SPAC)の「ふじのくに→←せかい演劇祭2022」の開幕が29日に迫った。新型コロナウイルス禍でオンライン開催など制約が続いたが、今年は3年ぶりに海外作品の上演も予定。「ふたたびつながる。演劇で、世界と。」を掲げ、ゴールデンウイークの静岡で5作品を上演する。 「新型コロナ禍で多くの人が孤立を深めている今、客席全員と分け隔てなく向き合う舞台の効能を実感してもらえると思う」。3月上旬、静岡市内で開いた記者発表で宮城聰芸術総監督が開催意義を語った。 同市駿河区の静岡芸術劇場で開幕を飾るブルガリア演劇「カリギュラ」は孤独な皇帝の不条理劇。最愛の妹を失い
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岩合光昭の世界ネコ歩き2 4月23日から三島・佐野美術館
世界各地を巡る動物写真家岩合光昭さんが撮影したネコの写真展「岩合光昭の世界ネコ歩き2」が23日、三島市の佐野美術館で開幕する。欧米諸国のほか中東、南米など各地のネコが見せたとっておきの表情や瞬間など計140点を展示する。「マイペース」「気分屋」とも言われるネコたちと向き合う難しさや喜びを岩合さんに語ってもらった。 --〇--〇-- 高校時代、友人の家にネコがたくさんいました。家屋の内外に計28匹。友人の肩越しに一匹と目が合い、心をつかまれました。 父が新聞社のカメラマンだった影響もあって、大学の頃から写真を撮るようになりました。海外の写真家が撮影したネコの写真集を見たことも一つのきっか
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浜松市美術館 阿弥陀仏(江戸時代後期)【美と快と-収蔵品物語㉔】
生活の中で使われた工芸品に美と価値を見いだす「民芸(民衆的工芸)」の思想は、提唱者の柳宗悦(1889~1961年)らの活動で全国に広まった。民芸運動との縁を持つ浜松市美術館には、江戸時代に旅の土産物として流通した「大津絵」のコレクションがある。名もなき絵師による「阿弥陀仏」は、素朴な味わいが心に優しい。 ■街道土産 素朴な仏画 力強い光背が目に飛び込む画面に、正面を向いた阿弥陀仏。穏やかさをたたえた表情は、大量に製作するためかシンプルな線だけで構成されている。 江戸初期に登場した大津絵は、東海道の大津宿(滋賀県)付近で土産物として売られた。風刺的な意味を持つ風俗画や戯画は庶民に親しま
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「アリエル役、自分も成長」 劇団四季「リトルマーメイド」主人公演じる若奈まりえ
観客の目をくぎ付けにする人魚のパフォーマンスと、感情を届ける澄んだ歌声-。劇団四季のミュージカル「リトルマーメイド」静岡公演で主人公アリエルを演じている若奈まりえ。「自らの運命を切り開いていくところが魅力的な役。アリエルに自分も成長させてもらっている」。ヒロインの姿に、舞台の夢を追い掛けてきた自身を重ねる。 美しい歌声を持つアリエルは海の王トリトンの末娘。人間が海に落としたさまざまな物に興味を膨らませ、地上の世界に憧れる。周囲の反対を押し切って未来を選択しようとする自立した強さが印象的だ。 子どもの頃から舞台に出演するなど経験を積んできたという若奈。劇団四季のミュージカルに興味を深め、努
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劇団四季「リトルマーメイド」最終通し稽古 静岡公演、2日開幕
劇団四季のミュージカル「リトルマーメイド」静岡ロングラン公演(静岡新聞社・静岡放送など主催)の最終通し稽古が1日、静岡市葵区の市民文化会館で行われた。県内初となる同作の公演は2日に開幕する。 大ホールのステージに、物語の舞台となる海底の国や地上の城を1カ月がかりで再現した。水中を泳ぐ人魚姫を宙に浮かせるなど、特殊な舞台装置も組み込む。通し稽古では本番通りの演出で本編を上演した。 劇団四季の同作は2013年に東京で初演し、これまで全国5都市で3600回以上、上演してきた。静岡公演は5月29日まで計54回。問い合わせは劇団四季静岡オフィス<電0570(008)110>へ。
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専門スタッフの技 長期公演支える手作業【海と舞台と 「リトルマーメイド」静岡公演㊦】
上演準備に活気づく衣装部屋に、青いシルクが柔らかに広がる。チーフスタッフの後藤満里絵さんがスチームを当てると、生地が水面のように揺れて艶めく。人魚姫アリエルの尾ひれは長さ約1・6メートル。しわをのばしながら丁寧に当てていく作業は華やかなようで力仕事だ。 本作に求められる“浮遊感”を出すシルクは「摩擦に弱く、舞台で使えば傷みやすい。ロングラン公演中も毎日のメンテナンスが欠かせない」。アリエルの姉たちの衣装には5千枚のスパンコールが縫い付けられる物もあり、日々の補修は全て手作業となる。 上演中は、場面転換時に衣装を切り替える俳優の「早替え」を舞台袖でサポート。「衣装