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富士の愛好家、文芸誌創刊 小説、詩、随筆そろう 持ち味生かし定期刊行へ

 富士市などの文芸愛好家のグループが1月、同人誌「文芸富士」を創刊した。近年では小説、詩、随筆がそろった総合文芸誌の創刊は珍しい。発行する「竹の会」代表の海野典子さん(72)は「若者向けの投稿スペースを用意して発展させたい」と定期刊行をにらむ。

現在では珍しい総合文芸誌として創刊した同人誌「文芸富士」=富士市
現在では珍しい総合文芸誌として創刊した同人誌「文芸富士」=富士市


 2023年2月に同市で開かれた文章講座が発端。全3回の講座終了後、月1回のペースで始めた自主講座のメンバーが母体となった。第2回定例会で講師の竹腰幸夫常葉大名誉教授が「目標は同人誌の年内発刊」と発言したことで、具体化が進んだ。役員の中根由香里さん(63)と松本真理子さん(73)は「『発破を掛けるハッタリじゃないか』という声もあった」「役員7人が全員困惑していた」と当時を振り返る。
 同人誌作りが決まってからは互いの作品を批評する合評会を重ね、文章の腕を上げた。分かりにくい箇所、言葉遣いを言い合った。3人は「同人誌初心者の集まりだったので、率直な意見交換ができた」と話す。
 全91ページの創刊号には私小説、ホラー、2人の作者が同じ少女を描く連作などさまざまな作風が集った。長く短歌を作っていた人が小説を手がけたり、川柳をたしなむ人が随筆を書いたりといった挑戦もみられた。
 年1回の発行を予定する。既に次作のテーマを決めた会員もいる。海野さんは「書き手の持ち味を生かした誌面を目指す」と次号を見据えた。
 (教育文化部・マコーリー碧水)

静岡県文学連盟が把握 同人グループ20団体 出版停止や終幕宣言も
 県文学連盟が2023年に編集した同連盟60年展の冊子には、同年10月段階で連絡が取れた俳句、短歌、小説、詩の同人グループが20団体記載されている。連盟の機関誌「文芸静岡」の編集委員長を務める竹腰さんは「出版活動を停止したところもある」という。1970年に「無明長夜」で第63回芥川賞に選ばれた吉田知子さん(浜松市中央区)が主宰の「バル」も、2022年11月発刊の第10号で終幕を宣言した。
 本紙に定期的に届く県内同人誌は約20誌。最古参は俳誌「みづうみ」(天野薫発行人・磐田市)で、1939年創刊という。2024年1月に第1008号を出した。

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