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物価高下のボーナス商戦 節約モノ推し 静岡県内小売業者、コロナ5類後「消費活性化を」

 官公庁や多くの企業で9日までに、冬のボーナスが支給され、県内小売事業者が歳末商戦の顧客需要の取り込みに注力している。物価上昇のペースに賃上げが追いつかず、実質賃金は19カ月連続で前年同月比マイナスを記録するなど消費者の懐事情は厳しさが増す。各店は集客イベントを相次ぎ企画するほか、長期的な節約につながる商品を提案するなど消費者の購買意欲を刺激しようと懸命だ。

食材の鮮度維持機能が付いた冷蔵庫が並ぶ売り場=11月下旬、静岡市駿河区
食材の鮮度維持機能が付いた冷蔵庫が並ぶ売り場=11月下旬、静岡市駿河区


 コジマ×ビックカメラ静岡店(静岡市駿河区)は食材の鮮度維持機能を備えた冷蔵庫を推す。冷蔵室全体をチルドとして使えたり、冷凍室の霜を抑制したりする機種をそろえた。買い替えを検討中の男性(61)=同市清水区=は「食費が上がっているので、特売日にまとめ買いした食材をおいしく長期間保管できるのは魅力」と話す。
 ただ「物価高などを契機に、家電を壊れる直前まで長期間使う顧客が増えた」(石原義人店長代理)といい、9~11月の売上高は前年同期比で約5%減少した。そこで新製品の電気代が10年前比で年間9千円以上安くなる点を掲示物で周知するなどして需要を喚起する。外出機会の増加による美容意識の高まりを受け、前年比10%伸長した関連商品も強化し、年末年始に反転攻勢を期する。
 安心堂静岡本店(同市葵区)は2階にあった時計売り場を、9月に呉服町通りを挟んだ反対側の路面店に移したところ、20代を中心に若者の来店が増えた。田中佳幸店長は「外から売り場が見やすく、時計好きが入店しやすくなった効果もあるが、高価でも気に入った品には迷わずお金を使う若者が増えている印象もある」と指摘する。
 一方、連休や週末の入店数は減少傾向で、新型コロナウイルス感染症の5類移行で消費行動の多様化を実感する。同店は24日までスイスの高級時計「オメガ」約180本がそろうフェアを開催。専用の陳列ケースに最新モデルを並べるなどブランドの世界観を強く打ち出す。年末に向けて浜松市や富士市の店舗でも高級時計のイベントを計画し、集客増を図る。
 来年元日は、縁起が良いとされる「一粒万倍日」と「天赦日」が重なるため、財布の買い替えを提案する事業者も。遠鉄百貨店(浜松市中区)は、売り場にポップを掲示するなど吉日を周知する。コロナ禍を契機に験担ぎを重視する消費者が増え、一定の需要が見込めるとみる。三宅隆史マーケティング戦略課長は「11月は来店客数・販売額ともに前年を約2%上回った。コロナの閉塞(へいそく)感もなくなり、ボーナス給付が消費活性化につながれば」と期待する。
 (経済部・駒木千尋)

民間支給 3年連続増予想
 静岡経済研究所が発表した県内民間企業の2023年冬のボーナス予想は、1人当たりの支給額が前年比2.4%増の41万6000円と3年連続の増額。一方で、10月の全国消費者物価指数は前年同月比2.9%上昇で、伸び率が4カ月ぶりに拡大した。所得増が物価の伸びを上回れない局面が長引けば、消費者の生活防衛意識は一段と強まるとも指摘される。
 同研究所の担当者は「食費をはじめとした生活費が膨らんでいるため、ボーナスの効果は限定的。ただコロナ下で抑えられていた消費が反動で増える“リベンジ消費”が、テレビなど耐久消費財の一部で見られる可能性はある」と語った。

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