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【提言・減災】火山研究担う本部発足 藤井敏嗣・東京大名誉教授

 来たる4月1日に火山調査研究推進本部(火山本部)が発足する。火山の調査研究を一元的に担い、火山活動を分析・評価する政府機関の発足は初めてである。これまでは、気象庁に置かれた火山噴火予知連絡会(噴火予知連)の下に大学や研究機関の研究者が、自らのデータと気象庁による観測データとを併せて国内の火山の活動評価を行ってきた。

藤井敏嗣氏
藤井敏嗣氏

 火山噴火が発生した時には、噴火予知連の下に大学や研究機関の研究者による総合観測班が置かれ、噴火推移の評価のために観測データの収集にあたってきた。しかし、観測のために必要な経費はそれぞれの機関で工面することが前提であった。あまり知られていないが、噴火予知連は気象庁長官の私的諮問機関としての位置付けであり、独自予算も関係機関との調整機能もなかったのである。
 今後は、火山で異常な現象が観測されれば、火山本部の責任のもとでの機動観測に基づいて分析・評価が行われることになる。火山噴火の予測や推移の把握に重要である火山の地下構造や噴火履歴の調査研究はこれまで、大学や研究機関の研究者の興味に任せられてきた。このため、活火山の中にはこれまで噴火の履歴調査がきちんと行われず、詳細が不明な火山も多い。
 今後は、各火山の構造や噴火履歴の調査研究は火山本部の基本計画に基づいて年次的に行われることから、各火山の噴火履歴が明らかになり、必要に応じて観測点の整備などが行われることが期待される。
 火山本部の発足は、今後予想される大規模な火山噴火に備えて、わが国の火山調査研究のレベルを高め、防災に役立てることが目的である。調査研究の基本計画が作られるのは発足後のことであるが、火山の調査研究の今後の進展に期待したい。

 ふじい・としつぐ 岩石学、マグマ学の第一人者として、富士山ハザードマップの検討・策定に携わり、2003年5月から17年6月まで火山噴火予知連絡会会長を務めた。県防災・原子力学術会議地震・火山対策分科会会長。77歳。

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