テーマ : お酒・ビール

シン・日本酒 老舗蔵元の挑戦 浜松市浜北区・麁玉地区【わたしの街から】

 石畳の通り沿いに特徴的なサルの石像が立つ古刹(こさつ)や、老舗の酒蔵が並ぶ浜松市浜北区の麁玉(あらたま)地区。麁玉には「磨かれていない」「飾り気のない」などの意味があり、同地区出身者の歌は万葉集にも収められている。風情ある景観と歴史を武器に、地域の魅力を発信しようとの動きが見え始めた。にぎわいづくりを目指す住民有志は新型コロナウイルス禍の収束後も見据え、イベントや地場産品の売り込みに情熱を注ぐ。

仕込みをする杜氏=浜松市浜北区の花の舞酒造
仕込みをする杜氏=浜松市浜北区の花の舞酒造
花の舞酒造=浜松市浜北区
花の舞酒造=浜松市浜北区
日本酒のもろみ搾りを体験するツアー参加者=浜松市浜北区の花の舞酒造
日本酒のもろみ搾りを体験するツアー参加者=浜松市浜北区の花の舞酒造
仕込みをする杜氏=浜松市浜北区の花の舞酒造
花の舞酒造=浜松市浜北区
日本酒のもろみ搾りを体験するツアー参加者=浜松市浜北区の花の舞酒造


若いファン獲得へ体験ツアーや新風味 花の舞酒造  麁玉地区の庚申寺へと続く石畳の通り。酒の仕込みの朝、辺り一帯には日本酒のふくよかな香りがほのかに漂う。
 幕末の1864年創業という老舗蔵元「花の舞酒造」の仕込みは朝7時に始まる。米やこうじを水と発酵させた醪(もろみ)が約3トン入ったタンクが24基並ぶ。1基から約6500リットルの日本酒が造られ、年間で約130基分を仕込む。
 2020年に酒造りの責任者「杜氏(とうじ)」となった鎌江慎太郎さん(32)=中区出身=は、同社の杜氏で歴代最年少。「若い世代に日本酒に興味を持ってもらうため、新しいアイデアを出したい」と意気込む。
 花の舞の酒は食中酒に適し、上品な甘さとおだやかな香りが特徴。だが、若い世代にも親しんでもらおうと、華やかで香り高く、フルーティな味わいの酒も造り始めた。
 コロナ後を見据え、「花の舞体験ツアー」を開始。蔵の見学を通して酒造りを学び、新設の「体験蔵」で醪をろ過する「搾り」を体験した後、造った酒を実際に味わえる。売り場もリニューアルして中庭を望める広々とした試飲所を設け、グループで一緒に酒を楽しめるように工夫した。
 名誉杜氏の土田一仁(64)さんは「地域の皆さんが地元の誇りとして語ってくれるような愛される蔵でありたい。郷土に根ざした酒造りを続けながら新しいファン層を獲得し、麁玉地区に足を運んでもらうきっかけを作りたい」と抱負を語る。

三猿ならぬ 四猿庚申寺


  photo03 庚申寺の庚申堂。お願い猿が鎮座する=浜松市浜北区   photo03 不見猿

  photo03 不云猿

  photo03 不聞猿

  photo03 宝珠猿
 奈良時代が起源とされる浜北区宮口の庚申寺は、室町時代の1390年に現在地に移った。山門の四隅に不見猿(みざる)、不云猿(いわざる)、不聞猿(きかざる)に宝珠猿を加えた「四猿」が座る。人の悪い部分を「見ない・言わない・聞かない」を果たせる人に、願いをかなえる宝の玉を持って宝珠猿が現れると伝わる。
 拝殿の前には宝珠猿を題材にした石像「お願い猿」が安置され、願いをかなえようと触る人も多いが、「若い世代を中心に寺離れが進んでいる」と仲山裕紀住職(37)は少し寂しそうだ。
 そこで、門前市を企画した。昨年12月から毎月最終日曜に開催。農産物や特産品をそろえ、地域の魅力や文化を発信しながら観光誘客を目指す。仲山住職は「地域を盛り上げ、寺にも人が集まってほしい」と期待する。

いい茶0

お酒・ビールの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞