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ハクサンシャクナゲ カラマツ林の中 鮮やかに【しずおかに生きる植物 夏➁】

 富士山スカイラインをはじめとする富士山山岳観光道路は、眼下に雄大な風景を広げながら5合目にいざなう。そこは亜高山帯の森。シラビソ、トウヒ、コメツガなどの常緑針葉樹の世界である。その森の中に常緑低木のハクサンシャクナゲが咲く。

常緑低木のハクサンシャクナゲ
常緑低木のハクサンシャクナゲ
亜高山帯に広がるシラビソ林
亜高山帯に広がるシラビソ林
常緑低木のハクサンシャクナゲ
亜高山帯に広がるシラビソ林

 ハクサンシャクナゲは高さ1~2メートル。楕円[だえん]形の大きな葉を付け、その枝先に10個ほどの大きな漏斗[ろうと]状鐘形の花を群れ咲かせる。白色でやや赤みを帯びる花はよく目立つ。
 5合目の7、8月は花の季節。コケ類を敷き詰めたシラビソの森にカニコウモリやイチヤクソウ類が咲き、キソチドリ、イチヨウラン、葉緑素を欠く菌従属栄養植物のヒメムヨウラン、シャクジョウソウ、ギンリョウソウに出合うこともある。
 5合目から高所にはカラマツが地をはうように生える。南アルプスなど他の高山から遠く離れ、氷河期以降に誕生した新生の富士山。他の高山ではハイマツ低木林が広がるのだが、ハイマツは分布せず、代わりにカラマツ低木林が広がるのが富士山の特徴である。そのカラマツ林にハクサンシャクナゲがひときわ鮮やかに咲く。
 独立峰、急傾斜地の5合目には多くの谷筋が走る。冬季には雪崩が頻発し、ダケカンバの林が帯状に連なる。そのダケカンバやミヤマハンノキの亜高木の林床はイネ科の草原が広がり、色鮮やかな花が咲く。タカネバラ、クルマユリ、グンナイフウロ、ヤハズヒゴタイ、ヒメシャジンなど多彩な花畑となる。
 富士山5合目は、雲海と伊豆半島、駿河湾を望み、遠く南アルプスの峰々を眺めながら、平地とは異なる別世界を散策できる。
 (文と写真・菅原 久夫=富士山自然誌研究会長、長泉町)

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