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EUエンジン車容認 EV出遅れの日本に追い風 両にらみで開発競争【大型サイド】

 欧州連合(EU)が合成燃料の利用を条件に、将来もエンジン車の販売を容認する姿勢に転じた。電気自動車(EV)市場で出遅れた日本メーカーには追い風になるとの見方が多いが、EVシフトが加速する世界的な流れは変わらないとの指摘もある。エンジンとEVの両にらみでエコカーの開発競争が続きそうだ。

各国の自動車に関する環境対策の取り組み
各国の自動車に関する環境対策の取り組み

緩む規制
 「EUは(温室効果ガスを排出しない)ゼロエミッション車の社会に向けた重要な一歩を踏み出した」。EUのティメルマンス上級副委員長は28日にツイッターで強調したが、自動車産業の意向を受けたドイツの強引な姿勢に各国は眉をひそめた。修正案に対する採決ではポーランドが反対し、今後の火種も残った。
 EUがエンジン車容認の条件とした合成燃料「e―fuel(イーフュエル)」は、ポルシェやフェラーリなど高級車メーカーが推進していることで知られる。現状ではコスト面で普及にはほど遠く、経済産業省によると海外製を日本に輸入する場合は1リットル当たり約300円、原料調達を含め国内で製造すると同約700円と、ガソリンの数倍の価格となる。
 欧州の環境団体からは早くも「裕福なドライバーだけが合成燃料の法外なコストを負担できる一方、規制を回避して代わりにガソリンを入れる人も出てくるだろう」と、環境規制の実効性が揺らぐとの懸念が出ている。
 東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは「(合成燃料以外にも)規制が緩む可能性はあり、エンジンで使う燃料は多様化していくだろう」と予測した。
 エンジン車市場で長年優位に立ってきた日本メーカーにとっては、EUの軌道修正は朗報だ。大手メーカー幹部は「既存のエンジンを使って事業をできることは大きい」と胸をなで下ろす。
流れ変わらず
 とはいえ、スウェーデンのボルボ・カーが2030年までにEV専業会社に転換する計画を掲げるなど、既にEV化にかじを切ったメーカーも少なくない。住商アビーム自動車総合研究所の大森真也社長は「(合成燃料は)一部の高級車だけが享受する可能性が高く、欧州や中国で加速しているEV化の流れは変わらないだろう」と指摘する。
 日米両政府は28日、米国がEVの優遇策について日本製も対象にできるよう要件を緩めることで一致。1月に岸田文雄首相がバイデン米大統領との首脳会談で「日本企業の(米国への)投資をちゅうちょさせる」と見直しを求め、約2カ月半の交渉で巻き返しに成功した。
 トヨタ自動車は25年にも米ケンタッキー州の主力工場でEVの現地生産を開始する方向で、EV市場の成長を見込んだ動きが激しくなっている。(ロンドン、ワシントン、東京共同)

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