テーマ : お酒・ビール

AI活用、魚種別の日本酒開発 福島、風評払拭に一役

 人工知能(AI)を活用し、福島県沖で水揚げされるヒラメやアンコウなど「常磐もの」と呼ばれる魚介類に相性がぴったりの魚種別専用日本酒「魚酒マリアージュ」を、同県浪江町の鈴木酒造店が開発した。夏ごろには東京電力福島第1原発処理水の海洋放出が控えており、県産品を味わう機会を増やして風評被害を払拭したいと意気込んでいる。

「魚酒マリアージュ」を開発した鈴木酒造店の鈴木大介社長=18日、福島県浪江町
「魚酒マリアージュ」を開発した鈴木酒造店の鈴木大介社長=18日、福島県浪江町

 同酒造店は、味覚に関するコンサルティングをしている東京の企業に、刺し身や魚介類を使った郷土料理の味の分析を依頼した。甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の数値を測定。これらをバランスよく口に含むとおいしさを感じやすいとされており、料理に足りない味を補うことができる日本酒の開発を進めた。
 料理と酒の味の分析値を掛け合わせ、AIが相性度を測定。酵母や製造方法を変えるなど試行錯誤を重ね、それぞれの料理の味を引き立てる相性が良い酒に仕上げた。
 カレイ、スズキ、カツオ、シラウオ、ホッキ貝など9種類の専用酒が完成。ヒラメの刺し身と専用酒を一緒に味わってみると、弾力のあるヒラメの身からあふれるうま味を、さっぱりとした甘さの日本酒が際立たせた。
 酒瓶のラベルにはそれぞれの魚のイラストをあしらい、全種類を並べると背景の絵がつながり地元阿武隈山地の山並みが浮かび上がる工夫も凝らした。2月に発売を始めて以降、客から「魚にとても合い、おいしかった」と反響が寄せられた。完成した日本酒はさらに研究を重ねて相性度を高めつつ、旬の魚に合わせ日本酒の種類も増やしていく予定だ。
 鈴木大介社長(50)は原発事故以降、奮闘する地元漁師の姿を間近で見てきた。「この酒がきっかけとなり地元の魚がたくさん売れてくれるとうれしい。質の高い県産魚介類の魅力発信につなげたい」と笑顔で話した。

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