テーマ : お酒・ビール

ビールのごみ、紙に再生 メニュー表、循環サイクル 処分負担軽減

 クラフトビールを醸造する過程で発生する「麦芽かす」を再生紙に生まれ変わらせる取り組みが注目を集めている。独特の風味で人気のクラフトビールだが、規模が小さな醸造所には大量発生する“ごみ”の処分費が大きな負担だった。再生紙はドリンクホルダーやメニュー表に利用され、各地のイベントなどに登場。環境に優しい循環サイクルが生まれつつある。

クラフトビールペーパーで作った製品を手にする「ナンバーナインブルワリー」醸造責任者の斎藤健吾さん=6日、横浜市中区
クラフトビールペーパーで作った製品を手にする「ナンバーナインブルワリー」醸造責任者の斎藤健吾さん=6日、横浜市中区
クラフトビールを醸造する過程で発生した「麦芽かす」を手に取る「kitafuku」の松坂匠記代表取締役(左)と「ナンバーナインブルワリー」の斎藤健吾さん=横浜市中区
クラフトビールを醸造する過程で発生した「麦芽かす」を手に取る「kitafuku」の松坂匠記代表取締役(左)と「ナンバーナインブルワリー」の斎藤健吾さん=横浜市中区
クラフトビールペーパーで作ったチケットを持つ「kitafuku」の松坂匠記代表取締役。右は「ナンバーナインブルワリー」醸造責任者の斎藤健吾さん=横浜市中区
クラフトビールペーパーで作ったチケットを持つ「kitafuku」の松坂匠記代表取締役。右は「ナンバーナインブルワリー」醸造責任者の斎藤健吾さん=横浜市中区
クラフトビールの麦芽かすを巡る循環サイクル
クラフトビールの麦芽かすを巡る循環サイクル
クラフトビールペーパーで作った製品を手にする「ナンバーナインブルワリー」醸造責任者の斎藤健吾さん=6日、横浜市中区
クラフトビールを醸造する過程で発生した「麦芽かす」を手に取る「kitafuku」の松坂匠記代表取締役(左)と「ナンバーナインブルワリー」の斎藤健吾さん=横浜市中区
クラフトビールペーパーで作ったチケットを持つ「kitafuku」の松坂匠記代表取締役。右は「ナンバーナインブルワリー」醸造責任者の斎藤健吾さん=横浜市中区
クラフトビールの麦芽かすを巡る循環サイクル

 「クラフトビールペーパー」を考案したのは、地域の課題解決を目指すスタートアップ企業「kitafuku」(横浜市西区)の松坂匠記代表取締役(33)。クラフトビールの人気が高まりつつあった約3年前、市内の醸造所から「大量発生する麦芽かすに悩まされている」と相談された。
 販売量が多い大手の一部は自前の設備で乾燥処理した上で飼料に加工できるが、クラフトビール醸造所は外部に頼るしかなく、飼料や堆肥として再利用してもらうにも受け入れてくれる牧場や農園が少ないのがネックだと教えてもらった。
 思案を巡らせる中でヒントになったのが、奈良県にある紙の卸問屋の取り組みだった。米や牧草から作る再生紙が人気で、「麦芽かすも紙に変えられるのでは」と思いついた。2020年12月以降、8カ所の醸造所から計約1500キロの麦芽かすを無償で回収し、再生紙を製造。段ボール箱やドリンクホルダーに姿を変え、ビールのイベントなどで活用されている。
 1週間に200キロ以上の麦芽かすが発生する横浜市中区の醸造所「ナンバーナインブルワリー」では処分費が1カ月当たり約15万円にも上り、「無駄な経費」と担当者を悩ませてきた。別の醸造所からの紹介でkitafukuの取り組みを知り、アイデアの斬新さにひかれて無償提供するように。これまでに約300キロの麦芽かすが系列レストランのメニュー表などに生まれ変わった。
 醸造責任者の斎藤健吾さん(49)は自身の名刺も作ってもらっており、「接客時や、取引先などとの話題のきっかけになる」と明かす。「世界的にも画期的なこの取り組みが広がることで、麦芽かすが無駄にならないような仕組みが構築されたらうれしい」と語った。
 静岡クラフトビール協同組合(静岡県沼津市)では、クラフトビールペーパー製の段ボール箱でビールを発送する構想を練っている。代表理事の片岡哲也さん(38)は「通常の段ボール箱より費用はかかるが、クラフトビールペーパーが普及するきっかけになれば」と期待する。
 ただ、横浜市から距離があるため、kitafukuによる無償回収は静岡では浸透しきれていないのが実情だ。片岡さんは「クラフトビールペーパー製品がたくさん利用されることで、回収の頻度が増えればうれしい」と話した。

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