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1000年続く「吉田たんぼ」  収穫米でビールも 静岡県吉田町【わたしの街から】

稲作、レタス栽培… 二毛作盛んな田園地帯

収穫したレタスを前に笑顔を見せる大石祐次さん
収穫したレタスを前に笑顔を見せる大石祐次さん

 吉田町のシンボル「小山城」の南側に広がる広大な田園地帯。地元住民に「吉田たんぼ」と呼ばれるこの場所は奈良・平安時代に条里田として整備されたと考えられ、千年以上も前から町の農業の歴史を紡いできた。夏から秋には稲作、冬にはレタス栽培が盛んで、四季の移ろいとともにさまざまな姿を見せる。

 町教委の資料によると、吉田たんぼの歴史は古く大化の改新(7世紀半ば)以来、稲作が行われていたという。周辺地域からはその存在を裏付ける出土品や集落跡が発見され、条里制遺跡として町の文化財指定を受けている。
 1955年ごろになると冬のレタス栽培が始まった。駐留米軍の生食用として「清浄野菜」の産地に指定されたことが産業の発展に大いに貢献。こうした戦後の歴史的背景の後押しもあり、町の特産品として認知されるようになった。
 二毛作を可能にする吉田たんぼの最大の特徴は土壌の豊かさと地理的環境にある。南アルプスを源流とする大井川の豊富な伏流水に加え、黒潮の影響による温暖な気候や豊富な日照量が農業の根幹を支えている。
 同所で50年にわたって農業を営む大石祐次さん(71)は「こうした恵まれた環境があってこそ、おいしい農作物が育ってくれる」と強調する。担い手不足が全国的な課題となる中、40代を中心に若手の活躍も顕著という。「県内有数の生産地で農業を行えていることに誇りを持っている。次の世代にも継承していきたい」と大石さん。この思いこそが、吉田たんぼが残り続ける最大の理由なのかもしれない。

シャキシャキ食感 メンチに、お寿司に
  photo03 多くの地域住民に愛されるレタスを活用した総菜類
 JAハイナン女性部で組織する「なでしこ会」(八木洋子会長)が毎週水曜、日曜に町内で開く朝市にはレタスを活用した総菜が並び、地域に愛される逸品となっている。
 地域おこしの一環で販売が始まった「レタスメンチ」はさっぱりとした味わいが特徴で、レタスのシャキシャキとした食感を同時に楽しむことができる。レタスとメンチカツを巻いた「太巻寿司」は節分の季節限定商品だったが、その人気から定番商品となっていったという。朝市にはこうした総菜を目当てに訪れる住民も多く、にぎわいに一役買っている。

「日常の景観」発信 収穫米でビールも 地元農家が奮闘
  photo03 実りの秋には一斉に収穫作業が行われる(吉田たんぼ活用推進協議会提供)   photo03 秋の収穫に向け広大な農地で行われる稲作(吉田たんぼ活用推進協議会提供)
 地域に食の豊かさをもたらしてきた「吉田たんぼ」の景観や歴史を町内外に発信しようと、同所の農業従事者らが「吉田たんぼ活用推進協議会」を結成し、多彩な取り組みを展開している。
 活動の中心を担うのは焼津市から同所へ約10年前に就農した真崎英彦さん(47)。仕事のかたわら、歴史的背景や広大な田園地帯の先に雄大な富士山を眺めることができる景観に魅力を感じ、「日常化しているこの場所の価値を見直したい」と一念発起した。
 真崎さんは地元の「吉田たんぼ営農組合」の協力を受けながら同協議会を結成。昨年には田んぼの魅力をまとめた動画を制作したほか、同所で収穫した米を使用したクラフトビールを開発するなど活動の幅を広げている。
 地元農家で同協議会会長を務める吉永貢さん(53)は「今までにはなかった新しい視点での活動。農作物にも付加価値を生み出していければ」と言葉に力を込めた。

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