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静岡県の清酒GI指定へ 国税庁、11月下旬にも 「静岡酵母」使用が柱

 国税庁は、本県の清酒を地理的表示(GI)制度の対象に指定する方針を決めた。一般からのパブリックコメント(意見公募)の手続きを経て、11月下旬の正式決定を見込む。GI「静岡」の名称で地域ブランドを保護し、付加価値や消費者の信頼性の向上、輸出拡大に向けた産地の取り組みを後押しする。指定されれば、酒類では県内初のGIとなる。20日までの同庁などへの取材で分かった。

 静岡県内28の全蔵元で組織する県酒造協同組合が、8月末に申請した。産地の範囲は県全体で、生産基準として原料に国内産米、県内で採取した水のみを使用。加えて、発酵に用いる酵母は「静岡酵母」とすることを柱に位置づけた。製造・貯蔵・容器詰めもすべて県内で行う。同組合が確認業務を担う管理機関となる。
 国税庁の担当者は、GI指定の条件について「産地ならではの特性が自然、人的な要因によって説明できること」を挙げる。本県の清酒は富士川や大井川、安倍川といった河川がもたらす豊富な伏流水、富士山の湧水を醸造用水に使うことで、淡麗で丸みのある酒質を醸し出すのが特徴。
 歴史的には江戸時代から東海道の宿場町の往来客をもてなす酒造りが盛んになった。昭和50年代になると県工業試験場(現・県工業技術研究所沼津工業技術支援センター)職員の故河村伝兵衛さんを中心に静岡酵母が開発され、関係者の努力で「吟醸王国静岡」と評される地位を築いている。
 GI指定により、こうした本県ならではの風土、独自技術により確立されたブランドを知的財産として保護する。地理的表示が浸透している欧州など海外でも信頼できる特産品として扱われたり、行政の取り締まりで模倣品が排除されたりする効果も期待できる。
 農林水産品や食品のGI制度では、農林水産省が県内の「三島馬鈴薯(ばれいしょ)」「田子の浦しらす」「西浦みかん寿太郎」「深蒸し菊川茶」を登録している。国税庁所管の酒類は、焼酎の「球磨」(熊本県球磨郡、人吉市)、清酒の「白山」(石川県白山市)や「山形」(山形県)、ワインの「山梨」(山梨県)など全国20以上の産地が指定されている。
 (東京支社・関本豪)

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