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日本酒産地名でブランド化 地理的表示、指定が急増 認知度、基準策定に課題も

 日本酒の地域資源を守る地理的表示(GI)保護制度の指定が近年急増している。産地名を冠する基準を設けてブランド力を高める取り組みの一環で、国内消費が頭打ちになる中、海外に販路を拡大したいという酒造業界と制度を所管する国税庁の思いが実を結んだ形だ。だが認知度はいまひとつで基準策定に難航することもあり、産地と結び付いた魅力発信につながるかどうかは未知数だ。

GI指定された岩手の日本酒=10月、盛岡市
GI指定された岩手の日本酒=10月、盛岡市
GI指定されている(左から)「佐賀」「山形」「灘五郷」の日本酒=16日、東京都港区
GI指定されている(左から)「佐賀」「山形」「灘五郷」の日本酒=16日、東京都港区
GI「岩手」の指定を記念して開かれたイベントで鏡開きをする清水雄策仙台国税局長(右から2人目)ら=10月、盛岡市
GI「岩手」の指定を記念して開かれたイベントで鏡開きをする清水雄策仙台国税局長(右から2人目)ら=10月、盛岡市
GI指定された清酒を手に喜ぶ岩手県酒造組合の久慈浩介副会長=10月、岩手県二戸市
GI指定された清酒を手に喜ぶ岩手県酒造組合の久慈浩介副会長=10月、岩手県二戸市
地域の日本酒のGI指定状況
地域の日本酒のGI指定状況
GI指定された岩手の日本酒=10月、盛岡市
GI指定されている(左から)「佐賀」「山形」「灘五郷」の日本酒=16日、東京都港区
GI「岩手」の指定を記念して開かれたイベントで鏡開きをする清水雄策仙台国税局長(右から2人目)ら=10月、盛岡市
GI指定された清酒を手に喜ぶ岩手県酒造組合の久慈浩介副会長=10月、岩手県二戸市
地域の日本酒のGI指定状況

 「GI指定をきっかけに、岩手の日本酒が世界に羽ばたけるよう支援したい」。10月に盛岡市で開かれたPRイベントであいさつに立った仙台国税局の清水雄策局長は力を込めた。今回新たに加わった「岩手」を含め、指定は全国で14カ所目だ。約5年間で12カ所が指定されており、年内には静岡県も追加される予定となっている。
 急増の契機になったのは、2015年に「日本酒」が輸出促進のために国レベルのGIの対象になったことだ。製造基準が国産の酒米を原料とするなどに統一されたことを受け、地域の特色を国内外にアピールするため、GIを取得しようとする動きが都道府県の酒造組合で活発化。需要を喚起したい国税庁も積極的に後押ししてきた。
 だが、指定が必ずしもブランド力の向上につながるとは限らない側面もある。農林水産省が20年に公表した調査では、GIの国内消費者の認知度は7・2%。認定には地域の酒造組合全体の合意が必要で、製法や使う酒米を巡り利害が一致しないこともある。結果、酒米などが他県産でも製造地が指定区域内ならGIを名乗れるケースも多い。国税庁の関係者は「基準を厳格にすればブランド力は高まるが、合意できなくなってしまえば本末転倒だ」とこぼす。
 一方、地域をより絞ったり、原材料を県産に限る独自の基準を設けたりする例もある。
 21年に県全体でGIを取得した長野県では今年6月、全国で初めて酒米の産地や製法をさらに限定した「信濃大町」がGIに指定された。
 岩手県酒造組合は今回のGI指定に加え、米こうじや酵母まで県産に限った純米酒を「オールいわて清酒」と名乗れるようにして違いを際立たせる工夫をしている。組合の久慈浩介副会長(51)は「GIはブランドを守る最低限のディフェンスライン。どう売り出していくかまで考えないと生き残れない」と話す。
 名古屋大のニコラ・ボーメール准教授(文化歴史地理学)は「日本酒は今や世界中で親しまれており、GIは品質を担保する証明になる」と指摘。「海外の消費者が求めるのは風土や文化に根差した酒造りのストーリー。酒造組合単位に限らず、より柔軟な申請ができれば、地域の活性化にもつながる」と話した。

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