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時論(5月20日)「沼津茶」振興 中長期的視点で

 今期の一番茶生産がおおかた終了した静岡県東部。主産地の一つの沼津市などは長年の課題となっている地元産茶の消費拡大に向けた取り組み「沼津茶愛飲運動」を本格的に始める。イベントでの販促や、応援大使に任命した地元とゆかりのある著名人による発信などで需要喚起を目指す。ただ、これで消費が伸びるなら苦労はない。
 沼津の茶生産は長年、第1次産業における主産業の一つとして地元を支えてきたが、近年は消費減や取引価格の低迷、生産者の高齢化と逆風だ。生産や流通現場の喫緊の課題に市はどう向き合うのか。沼津茶の消費者の認知度は県内の他産地と比べて高いとは言えない。産地としての独自色を打ち出す努力も欠かせない。
 主産地は富士山の南に位置する愛鷹山麓。茶が輸出品として引き合いが出始めた幕末の頃、地元有力者の坂三郎が茶園を開拓したのが始まりとされる。その後、教育者や政治家などとして知られる江原素六が指導者となり、礎を築いた。今では普通煎茶と深蒸し煎茶、ぐり茶が中心で、品種は主力の「やぶきた」のほか、「さえみどり」や「つゆひかり」と多彩だ。
 しかし、ブランド力は見劣りする。贈答向けで知られる静岡・本山[ほんやま]、深蒸し煎茶生産が盛んな牧之原や掛川、菊川にはかなわない。一方で県東部には、地域資源として富士市大淵笹場に広がる茶園と富士山の景観や、特産化を目指す同市のほうじ茶、伊東市を中心に小売店で販売するぐり茶といった売りもある。日常茶飯事と言うように茶にご飯は付き物で、「御殿場コシヒカリ」や地元魚料理とのコラボも見てみたい。
 取り組みを一過性で終わらせてはならない。中長期的視点で臨むことだ。
 (東部総局編集部長・高橋和之)
 

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