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体育館の冷房導入進まず 静岡県内公立小中、設置率1.9% 避難所使用時熱中症の懸念

 静岡県内の公立小中学校の体育館の冷房設置率が1・9%(昨年9月現在)と進んでいない中、夏に災害が発生した場合に避難所となる体育館での熱中症多発を懸念する声が防災の専門家らから上がっている。各市町の教育委員会は冷房が未整備の特別教室への完備を優先し、体育館は当面先となりそうな見通しだ。設置工事が不要でエアコンより安価なスポットクーラー(可搬式冷風機)を活用する例もある。

エアコンが稼働する体育館で体育の授業を行う生徒=2日午後、吉田町の吉田中
エアコンが稼働する体育館で体育の授業を行う生徒=2日午後、吉田町の吉田中
部活動の合間に可搬式冷風機で涼む生徒=4日午後、長泉町の長泉中
部活動の合間に可搬式冷風機で涼む生徒=4日午後、長泉町の長泉中
エアコンが稼働する体育館で体育の授業を行う生徒=2日午後、吉田町の吉田中
部活動の合間に可搬式冷風機で涼む生徒=4日午後、長泉町の長泉中

 2日午後、吉田町の吉田中。屋外の温度計が29・4度を指す中、窓を閉めた体育館内で生徒が体育の授業を行っていた。1階の武道場とアリーナに計12基、2階のアリーナに16基のエアコン室内機が設置され、25度に設定された室内で生徒は涼しげに体を動かす。2019年度、避難所としての環境改善も目的に町内の小中全4校に整備された。「9月以降も暑い日が続く中、屋内で体育ができるのは学校としても安心」と織田澄夫校長は説明する。
 文部科学省の調査では昨年9月現在、県内の公立小中学校で体育館に冷房を導入しているのは掛川市(設置率17・9%)と長泉町、吉田町(ともに同100%)だけ。掛川市は一部体育館の多目的スペースにのみエアコンを設置し、長泉町は小中全5校にエアコンではなく可搬式冷風機を配備するなど、冷房の導入例はごく少数にとどまる。
 他の市町は体育館の窓や扉を開放し、大型扇風機などを使って熱中症対策を図っている。だが、避難所・避難生活学会代表理事で石巻赤十字病院(宮城県)副院長の植田信策さんは「扇風機は皮膚からの水分蒸散で体温が2度ほど下がり、肌に風が当たれば効果があるが、室温を外気温以下に下げる効果はない」と指摘。高齢者も多く集まり、長期間にわたり寝泊まりする可能性がある夏季の避難所では「エアコンは必須」と強調する。
 文科省調査によると、県内公立小中学校の普通教室のエアコン設置率は100%。一方、理科室や音楽室など特別教室は36・8%で、静岡、浜松両市教委は「体育館より特別教室への設置の方が優先度が高い」としている。夏の体育の授業は水泳が中心になることや、夏休みがあることなどを理由に挙げる。静岡市教委は9月、普通教室以外の熱中症対策として試験的に小中計2校にスポットクーラーを各4台配備した。
 エアコンもスポットクーラーも災害時に停電となれば使えなくなる。植田さんは「電源車や発電装置の派遣要請も想定し、地域防災計画に記載されていることが望ましい」と話す。
 (社会部・瀬畠義孝)

重い財政負担 課題 識者「民間施設も避難所に」  昨年9月の文科省調査によると、全国の公立小中学校体育館の空調設置率(スポットクーラー含む)は11.9%で、都道府県別では東京都が82.1%と突出している。大阪、兵庫など4府県が20%台で、残りの大半の県は5%以下だ。
 同省は体育館に空調を設置する場合、効率的な温度管理のために床下や壁などの断熱化工事も併せて行うよう推奨している。浜松市教委は「断熱化とエアコン設置の工事には1校当たり5000万~1億円程度のコストがかかる」と試算。市町が単独予算で設置するには財政的な負担が大きい。
 静岡大防災総合センターの岩田孝仁特任教授は「指定避難所の見直しを早急に進めるべきだ。公共施設だけでなく民間施設にも協力を求め、暑さ・寒さ対策といった基本的な環境が確保できる施設を優先した方がいい」と指摘する。

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