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世界かんがい遺産 富士宮・北山用水/長泉・本宿用水 静岡県内2施設候補に 11月登録可否

 農林水産省は30日、国際かんがい排水委員会(ICID)日本国内委員会が世界かんがい施設遺産の候補として、北山用水(富士宮市)と本宿用水(長泉町)の静岡県内2施設を含む4施設を選んだと発表した。11月にインドで開かれるICID理事会で登録可否が決まる。

世界かんがい施設遺産の候補に選ばれた北山用水=富士宮市
世界かんがい施設遺産の候補に選ばれた北山用水=富士宮市
世界かんがい施設遺産の候補に選ばれた本宿用水=長泉町
世界かんがい施設遺産の候補に選ばれた本宿用水=長泉町
世界かんがい施設遺産の候補に選ばれた北山用水=富士宮市
世界かんがい施設遺産の候補に選ばれた本宿用水=長泉町

 芝川を水源とする北山用水は、1582年に北山本門寺の願いを受けた徳川家康が開削を命じたとされる。弓沢川までの全長約8キロの区間に12カ所の分水口が設けられ、農業や防火など幅広い用途の水を提供。富士山麓に点在する侵食谷を通水する掛け樋(どい)、埋め樋は当時、革新的な技術だったという。
 北山用水運営協力委員会の石川雅洋会長は「良質な水がなければ米が作れない。今も地域に欠かせない水」と言う。委員会では定期的に水路の監視とごみ拾いなどを続け、「しっかりと後世に引き継ぎたい」と思いを新たにした。
 本宿用水は、黄瀬川の「鮎壺の滝」上部にある新井堰(せき)から取水し、延長540メートルの隧道(ずいどう)と480メートルの水路で構成する。降水時に暴れ川となる黄瀬川は稲作に向かないため、領主の天野三郎兵衛康景が1603年に完成させた。隧道通水の水利や鉄のノミを使った人力の掘削、あんどんを使う測量など高度な技術が結集し、67年後の深良用水(裾野市)建設の手本にもなった。
 現在も本宿共有財産等管理委員会や本宿部農会など有志が維持管理し、水田に安定供給する。申請したグラウンドワーク三島の渡辺豊博専務理事は「若い人にはほとんど知られていない。イベントを通じて、地域の歴史を広めたい」と意気込んだ。
 世界かんがい施設遺産は、建設から100年以上経過し、歴史的価値の高い利水施設を登録する。県内では深良用水、源兵衛川(三島市)、寺谷用水(磐田市)、香貫用水(沼津市)が登録されている。
 (経済部・金野真仁、東部総局・菊地真生)

 

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