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医療城下町を発展、住民に成果還元へ 静岡県東部「ファルマバレー」 新局面へ手探り続く

 静岡県東部で先端医療の提供と研究開発、医療健康産業の集積と振興を図る県のファルマバレープロジェクトが転換点を迎えている。これまでの将来像「医療城下町」を発展させ、「医療田園都市」「超高齢社会の理想郷」の実現を新たに打ち出した。従来の企業と患者中心から住民中心となり、市町と一体となった取り組みが求められる中、次の具体的な展開に向け手探りが続く。

3歩程度歩ければ自立した生活ができる居室のモデルルーム。実装、普及を目指す=3月下旬、長泉町のファルマバレーセンター
3歩程度歩ければ自立した生活ができる居室のモデルルーム。実装、普及を目指す=3月下旬、長泉町のファルマバレーセンター

 「医療城下町を基盤に発展し、世界一の高付加価値産業の集積や住民の豊かな暮らしの確保を目指す」。県が昨年7月に策定した医療田園都市構想は、医療田園都市の在り方を示す。製品開発や人材育成といったプロジェクトの成果を、産業界や医療界にとどめず住民に広く還元する段階に入ったという。モデル地域として長泉町など12市町を定めた。
 県やプロジェクトの中核支援機関、ファルマバレーセンターは具体的な展開の足掛かりを得ようと各市町にニーズ調査を実施した。全体で取り組めそうな課題や複数市町で連携が可能な事業、個別に支援できそうな事象を今後洗い出す予定。ただ、関連施策の進捗(しんちょく)は市町ごとに異なる上、プロジェクトに対する温度差も大きく、作業は難航も予想される。
 世界一の健康長寿県を目指し2002年にスタートしたプロジェクトは順調に成果を積み上げた。地域企業51社が医療分野に参入し、177の製品が生まれた。口腔(こうくう)ケアセットなど一般化した製品もある。近年は医療から介護福祉分野に拡大。県立静岡がんセンターの患者対応のノウハウを生かし、3歩程度歩ければ自立した生活ができる居室のモデルルームを開設した。
 ファルマバレーセンターの担当者は「最新の医療や福祉が特別なものとしてではなく、生活に溶け込んだ形で提供されているまち」とイメージを語る。高度医療の供給体制、豊かな自然や都市機能など必要な要素は既にそろい、それらを結びつけ相乗効果を生む仕組みが必要との見方もある。
 人口減少や高齢化など各市町共通の課題は多く、県の担当者は「同じ方向を向きやすい。企業を含め地域一体で進め、10年や20年という長い期間で理想郷が成り立てばいい」と見通す。
 (東部総局・矢嶋宏行)

 医療田園都市構想 ①医療、福祉、介護による安心実感②田園のゆとりが味わえる③都市の活力が生きる―をまちづくりの戦略に掲げた。具現化する戦術は、医療環境整備やヘルスケア対策、高収入が得られる産業集積や交通インフラ強化など多岐にわたる。モデル地域は沼津、三島、富士宮、富士、御殿場、裾野、伊豆、伊豆の国、函南、清水、長泉、小山の各市町。県と市町の連携会議を立ち上げ、情報共有や議論の場にする。

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