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列車の顔「方向幕」製造 鉄道ファン向け複製も 長泉・匠の仕事 

 鉄道車両やバスに設置されている巻き取り式の行き先表示「方向幕」を製造する国内有数の企業「コロナ宣広社」(本社・千葉県松戸市、川村武大社長)の静岡工場が、長泉町の工業団地にある。同社製造の方向幕の全てが同工場から届けられ、全国の車両に設置されている。近年はLED式案内表示の普及で製造数は減っているが、進化を目指し「日本の“鉄道文化”として残したい」とファン向けのレプリカ製造も手がけている。

印刷するインクを機械にセットする鈴木利幸さん=長泉町南一色のコロナ宣広社静岡工場
印刷するインクを機械にセットする鈴木利幸さん=長泉町南一色のコロナ宣広社静岡工場
印刷するインクを機械にセットする鈴木利幸さん=長泉町南一色のコロナ宣広社静岡工場


LED式普及で減少 「文化残す」  方向幕は厚さ50ミクロンの化学樹脂フィルムに行き先やヘッドマークを印刷。フィルムは機械にセットし、電動で上下に巻き取って1コマずつ表示を変え、ライトで照らして示す。1本は通常、幅40~70センチで10~50コマ、長さは10~20メートルほど。長い物では90コマ、41メートルに達する。製造は「シルクスクリーン」と呼ばれる印刷技法を使う。印刷する色ごとにナイロン製の布に熱で穴を空けて刷版を作製。特急列車のヘッドマークなど多くの色を使う場合は、多色刷りの版画同様に何度も刷り重ねていく。
 製版や印刷、乾燥など機械化された工程は多いが、色がずれないよう位置を合わせるのは、今も職人の目に頼る。失敗の許されない緊張感のある作業だ。製造現場の社員を束ねる静岡工場製造業務部マネージャーの鈴木利幸さん(47)は「完成した時は芸術品ができたような気分。インクジェットの機械では、この濃さは出せない」と誇らしげに語る。
 同社は浮輪などビニール製玩具への印刷技術を応用し、約50年前から方向幕製造を始めた。JR各社や全国の私鉄、バス会社に納める他、高速道路などにある幕式の交通標識も製造する。長泉町には機械部分を製造する企業があり、1993年、沼津市に静岡工場を開設。97年、同町に移転した。
 近年の鉄道車両やバスは多彩な表示が可能で、表示変更による取り換えコストがかからないLED式が主流。コロナ宣広社も時代に対応し、高い印刷技術を応用した方向幕以外の案内表示や、道路の標識などを手がける他、往時を懐かしむ鉄道ファン向けのレプリカ方向幕の製造にも力を注ぐ。同工場営業部の伊東利夫課長(44)は「方向幕は手作業の温かみがあり、どの角度からでも見える利点もある。何とか残していきたい」と願う。


 

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