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不登校でも「学校」に行かせるべき?⑦ しずしんニュースキュレーターと読者の意見【賛否万論】

 不登校やその受け皿になっているフリースクール、私立通信制高校をテーマとして取り上げ、「学校」に行かせるべきか、行かせなくてもいいのかを考えてきました。学校教育の本来の役割や意義が浮き彫りになっています。今回も引き続き、キュレーターや読者の意見を紹介します。障害のある子のいる保護者からも投稿が寄せられていて、不登校問題の多様な背景が垣間見えています。
友人との時間 損失どう補うか
キュレーター 高木有加さん(長泉町)


 

 

1男1女の母。ママ防災塾マモルマムズ代表。レンタルスペース「ママとこどものヒミツキチmorisbase」の管理人。ミッションは「孤独な子育て、ダメ、ぜったい。」

   多くの子どもたちにとって、「学校」は社会のすべてです。会社以外にもコミュニティーを持てる大人と違い、子どもの社会は限定的です。だからこそ子どもたちは、学校には行かなくちゃいけないと思っているし、頑張らなくちゃいけないと大人以上に思っています。その上で、「行きたくない」と親に言う時は、よほどの行きたくない時なのだと思うのです。“自分の気持ち”だけでは頑張れない時だと思うのです。
 幼稚園の頃から、朝起きると第一声が「今日幼稚園ある?」「行きたくない!」だったわが子。行きたくない気持ちを思い出させないように支度をして靴を履かせ、手をつなぎ歌を歌い、草花を見つけ、タンポポの綿毛を吹き、虫に話しかけながら登園した日々でした。そんなふうにして門まで行けば、笑ってバイバイできる日もあり、そうしても泣きながら先生に抱っこされて入って行く日もありました。
 でもそうした日々があったからこそ親として、今日は手を添えれば行けそう、今日は厳しそうという見極めもできるようになった気がしています。けれど、親ができる応援なんてそこまでです。家を1歩出れば、先生と友達と自分、そこがすべてである「学校」。学校内でのトラブルが原因で行きたくない、行けない、になった時、「学校」にはほかに逃げ場がありません。大人のように、転職(転校)することも容易にはできません。
 「学校」が、体調を崩すほど行きたくない、行けない場所になる時。その時は、行かなくていいよと言えるのは親しかいません。「学校に行くくらいなら死にたい」と子どもに言われた友人がいます。わが子が目の前で大笑いしているのを見るとつくづく、この笑顔を見られることが、親の何よりの喜びだなあと実感します。親が守るべきは、この笑顔。「卒業まで学校に行けることが1番」。そんなことは、不登校の子もその親もみんなが思っていることです。その上での不登校という決断なのです。
 そんな不登校が“普通”になりつつあるほどに増えている昨今、「学校に代わる場所」が課題です。その選択肢を広げることが、住民の笑顔を守る行政や政治の役割ではないかと思います。義務教育の“義務”とは、子どもが学びたい環境で学ぶことを大人が支える義務を言います。フリースクールの金銭的な支援や通信制や定時制高校のほかにも、ホームエデュケーションで進学する道や、そもそも「学校」の登校日数が実質的に受験に影響する現在の入試制度の見直しなどです。
 あるいは、現在の学校内にももっと地域の大人や大学生が入れるようになると、いわゆる教師と生徒、親と子どもだけではない“ナナメの関係”が構築できて、逃げ場ができるかもしれません。2023年3月、不登校によって学びにアクセスできない子どもたちをゼロにすることを目指し、国の「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」が発表されましたが、現実は大半の子どもたちが取り残されたままです。
 それにしても、不登校と言えば失った学びの時間のことばかりが取り沙汰されますが、当事者やその親にとったら大事なのはそこじゃないと私は思います。学びは、学びたい時に何度でも学べますから。それよりも大きな損失は、限りある子どもの時代に、友と使うはずだった時間と、できるはずだった思い出を失うということ。大事なことはむしろその損失に代わる時間と場をどう与えられるか。学校という「箱」にこだわりすぎずに、できるだけ早く、一つでも多く、私たち大人が考えなければならないと強く思うのです。

起立性調節障害 実情知って
読者 フラミンゴさん 50代

 昨年11月24日付の不登校に関する記事「フリースクール経営難 重み増す受け皿 行政支援望む声」を読みました。中学3年の次女は学校に行きたくても行けない病気です。起立性調節障害という自律神経の異常がさまざまな不調を起こす思春期の病気で、半年前に発症しました。軽・中・重症を合わせると、日本では10代の1割もいるそうで、年々増加しているそうです。
 子どもが病気になるまでは知りませんでしたが、聞いてみると同じ学校にも何人かいるようです。子どもは体調が悪くて欠席が増えましたが、学校の先生は理解して対応してくれています。しかし、病気を知らない人の方がまだ多いです。
 朝起きられず体が重いと言って寝たきりの娘の病気がわかるまでは、「精神的な問題? これって不登校?」と思いました。ですが調べていくうちに、自律神経の異常のきっかけは、いろいろと頑張りすぎたことが原因だったとわかりました。うちの子も思い当たることがありました。先生に病気のことを他の生徒へ説明してもらうまでは、体調不良だと言っても、「サボりじゃないか?」と友達にまで冗談ぽく言われたこともあります。今は理解されてきて、なんとか過ごしていますが、まだまだしんどいです。
 うちの子は友達とも先生とも関係は問題なく良好で、逆に学校に行けた日はうれしそうに学校での出来事を話してくれます。ですが、思考低下や集中力の低下の症状があり、学力がかなり落ちてしまいました。不登校の子の中には、うちの子のように学校に行きたくても行けない病気の子がたくさんいます。県教育委員会にも、学校に病気の理解を深めてもらう、周りの生徒への対応を考慮するなどの指導を統一して、子どもの支援をしてほしいです。
 うちの子は幸い友達や先生にも恵まれ、なんとか乗り切ってきていますが、悩んでいる子も多いと思います。同じ病気の子は、体調が悪いだけで大変な思いをしている上に、休みがちだと学校に行きづらくなったりと、本当に精神不安定になってもおかしくないです。
 うちも親子で前向きに考えつつも、もんもんとした毎日を過ごしています。また、体調が日によって違ったり活動できる時間が少なくなったりするため、フリースクールや塾も通いづらく、学力低下も深刻です。ですので、学び直しの学習の支援もあったらいいのにと思います。今、私立通信制高校の進学を前向きに考えていますが、県立の通信制高校でもオンライン併用や動画配信授業があるといいと思います。就学支援制度もありますが、特に県外本部の通信制高校は県内全日制私立より設定が高めなので負担が結構大きいです。
 毎日学校に行けることが「普通」ですが、普通に学校に行けない子どもがいることを多くの人に知ってほしいです。そして、今、通信制高校でも全日制高校でも同じ高校卒業資格を取得でき、進学や就職もできるそうなので、偏見のない世の中になってほしいです。

おかげで居場所見つけられた
読者 だてえみこさん

 私の娘は中学1年から行き渋り、中学2年からほぼ学校に行きませんでした。起立性調節障害と診断されました。本当にいろんなことがありました。そんな娘は今、別府で大学生をしてます。
 国際系のとっても自由な大学です。友だちにも元不登校がいたり、普通の高校を卒業した友だちに「(私立通信制の)N高だった」と話しても、「ふーん」で終わり。みな自由で自分があり、自立していて…。そんな友だちに恵まれ、娘から楽しいの言葉が聞けていまはホッとしています。
 娘はやっと自分の居場所を見つけることができたのだと思います。勉強も楽しいと、秋からはスウェーデンに交換留学に行きます。娘は不登校でなかったらこの大学を選ばなかったと言っています。
 娘の不登校は本当に辛くて苦しかった。けれど、不登校のおかげで親子関係を見直すことができ、何より私の価値観が変わり、私自身、とても楽になりました。みんな、どの子も大丈夫! 私は心からそう思います。
 私たちの経験が少しでも誰かの未来になれたら、と書かせてもらいました。補足として、息子も不登校になりました。こちらも楽しく高校生をやってます。大丈夫、何とかなります。

いい茶0

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