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遺伝カウンセリング 検査か否か決断支える 【共に歩む 静岡がんセンター公開講座㊤】

 「予防と早期発見ができ、命を守ることにつながるかもしれません。でも、発症の不安が続いて結婚などの選択に影響する可能性もあります。遺伝子検査を受けるかどうか、ご家族と相談しながら考えてください」。遺伝外来の診察室で、遺伝カウンセラーの浄住佳美さんは30代独身女性に語った。女性は乳がん患者の娘。症状はない。家系内の状況から、がんの要因になりやすい遺伝子変化を生まれつき持つ可能性があるとされ、遺伝外来を訪れた。

遺伝子検査のメリットとデメリットを説明する浄住佳美=長泉町の県立静岡がんセンター
遺伝子検査のメリットとデメリットを説明する浄住佳美=長泉町の県立静岡がんセンター

 がんは主に生活習慣など後天的な要因が重なって罹患(りかん)する。ただ、家系内に複数の罹患者がいる「がん家系」は25%に及び、その一部は生まれつき持つ遺伝子変化が発症の原因になっている。静岡県立静岡がんセンターでは患者の初診で家系内の罹患歴を聞き取り、必要に応じて遺伝外来を紹介する。その家族も診療する。
 症状がない人の場合、遺伝子検査を受けるかどうかが悩みどころ。遺伝子変化があると分かれば、結果を踏まえた予防や早期発見のための対策を講じられる。一方、発症の不安を抱え、結婚などの人生設計に影響を及ぼす懸念がある。診療や検査は医療保険適用外で費用負担も大きい。性別や年齢、家族構成、経済力などによって判断が分かれる。浄住さんは「最善の選択は一人一人違う。納得して判断してもらえるよう説明を尽くす」と語る。考えられるメリットとデメリット、部位ごとの発症リスクと対策方法などを伝える。
 がんと遺伝の関係は、発症率の高い遺伝子変化が見られた米女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが予防のため乳房を切除してから注目度が高まった。同センター研究所をはじめ各機関で遺伝情報(ゲノム)研究が進んでいる。部位ごとに検査の推奨時期などを定めたガイドラインが策定されている。浄住さんは遺伝子検査を受けない場合でも生活習慣改善や定期的ながん検診を勧める。「自分の体質を知り、早期発見や予防につなげてほしい」。日本人の2人に1人ががんになる現代、全ての人への訴えでもある。
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 「患者さんの視点の重視」を基本理念に掲げる県立静岡がんセンター。職員は時に、共通の答えがない問題に直面する患者や家族と向き合う。14日開講の公開講座(静岡新聞社・静岡放送主催)を前に、遺伝に関する情報を提供する「遺伝カウンセリング」と、治療に伴う外見変化による負担を軽減する「アピアランスケア」に従事する医師と看護師を取材した。



 14日から三島で講座、オンラインも 来年1月まで全5回
 がんの最新治療や最先端の研究を解説する県立静岡がんセンターの公開講座「ここまで進んだ!最先端のがん医療」が14日、三島市民文化会館で始まる。1月27日までの全5回。
 いずれもユーチューブで配信し、オンラインでも受講できる。受講無料、事前登録制。問い合わせは平日午前9時~午後5時に静岡新聞社・静岡放送東部総局<電055(962)0381>へ。

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