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静岡人インタビュー「この人」 科学技術賞技術部門で文部科学大臣表彰を受けた 安部一祐さん(沼津市)

 科学技術分野の研究開発などに貢献した人に贈られる賞で2023年度、県内唯一の表彰を受けた。使い捨てが多い焼き肉用網の洗浄機「網ing」の開発が評価された。長泉町の機械製造業「京和工業」の会長。81歳。

安部一祐さん
安部一祐さん

 ―洗浄機開発の経緯は。
 「20年ほど前、知り合いの焼き肉店で積み上げられた大量の網と、洗浄に4時間かかる旧式の洗浄機を見て、簡単に短時間で網を洗うことができないかと考えた。多い店で年間約6万枚、重さにして3~4トンが廃棄される網の再利用で、コスト削減や環境負荷軽減、時間短縮で店の経営者や従業員の負担軽減につながればと開発した。現在では大手焼き肉チェーン店でも利用されている」
 ―どのような仕組みか。
 「脂汚れを剝離する薬剤に使用済みの網を漬けた後、洗浄機にセットする。ドラム状の機械の中で、セラミック粒子と網を一緒に回転させて水洗いし、網目の重なる部分まで焦げなどの汚れを落とすことができる。洗浄、すすぎを行う間に網の方向も自動でそろえられ、40枚を40分で一気に洗浄できる」
 ―着想のきっかけは。
「長年携わっていた自動車部品の製造でバリ(不必要な突起)取りに使う回転式の研磨機から着想した。工程を油脂の剝離と洗浄とに分け、それぞれを確実に行う流れにしたのも、一つ一つ工程を完成させていく自動車生産の考え方を応用した」
 ―受賞の喜びや今後の意気込みを。
 「大変な評価をいただき、社員と共に苦労が報われた。洗浄機は3回のマイナーチェンジでほぼ完成形になった。これからは現在取り組んでいる福祉用機器の製造でも、社会に貢献していきたい」

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