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社説(2月25日)「教育に新聞を」 表現力を伸ばす教材に

 静岡県NIE(教育に新聞を)推進協議会の2023年度実践報告会が静岡市内で開かれ、小中学校、特別支援学校の実践指定6校が2年間の取り組みを紹介して成果と課題を発表した。
 各校の報告では、新聞を「読む」「書く」の教材として用いるだけでなく、児童生徒の「表現する力」を伸ばすためのツールとして活用した事例が相次いだ。学習指導要領が提唱する「主体的・対話的で深い学び」「アクティブラーニング」に資する存在として、NIEが存在感を高めている様子がうかがえた。指定校の先駆的な試みが、他校にも広がってほしい。
 静岡市立清水飯田中では、昼の校内放送で当日の新聞記事を紹介し、読者欄への投稿にも取り組んだ。投稿は年間延べ20本が掲載され、生徒の学習意欲向上につながったという。伊豆市立土肥小中一貫校は児童生徒がお気に入りの記事を紹介するスピーチ大会「シンブリオバトル」や、記事の見出しの良しあしを競うコンテストを実施した。浜松市立春野中では、3年生の公民で、複数の社説を読んで感想を発表する時間を設けた。
 どの取り組みも「読解力の向上」というNIEの土台を最大限に生かした上で、その可能性を拡張する意欲的な実践だ。子どもが自分の考えを述べる機会を創出し、能動的な「表現」を後押しする存在として新聞を用いた。学校や教員の創意工夫が、学習効果を一層高めていると言えるだろう。
 NIEは、学校などで新聞を教材として活用する運動。活字文化や民主主義社会の発展を掲げ、教育界と新聞業界が1986年から全国展開している。教委や学校の関係者が名を連ねる各地のNIE推進協が推薦し、日本新聞協会が認定した2023年度の実践指定校は、47都道府県530校。本県では小中高、特別支援の14校が取り組んだ。
 新聞は、真偽不明な情報が飛び交うインターネット社会で「信頼に足る情報」を得る手段として期待されている。情報を読み解く力を育むと言われ、NIE実践校は全国学力テストの平均正答率が全国平均より高いという調査もある。朝や昼休みなどの隙間時間を利用して新聞を読む活動を継続すると、さらに学力向上が見込めるという。指定校のみならず、各校で幅広く新聞の活用を考えてほしい。
 NIEは1930年代に米国で始まり、世界80カ国以上に広まった。国内では85年、本県開催の新聞大会で初めて提唱された。そのため、静岡は日本のNIEの発祥地とする声もある。ICTツールが普及した今こそ、実践を踏まえた新しい新聞の活用法を教室の内外で考えたい。

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